200メートルバタフライでは、リオデジャネイロ五輪銀メダルを獲得した坂井聖人(早稲田大学)。金メダリストのマイケル・フェルプス(米国)が引退した今、順当に世界ランキング1位を獲得している。課題にしている前半のスピード強化がどこまでできているのか。それが今大会のメダル獲得のカギを握っている。

 また、同じチームで切磋琢磨する若手2人、高校3年生の長谷川涼香と牧野紘子(ともに東京ドーム)が出場する200メートルバタフライにも注目したい。五輪2大会連続銅メダルを獲得した星奈津美が引退した今、2人がその伝統を受け継ぐ。現状で長谷川が世界ランキング2位、牧野が3位に位置する。この2人には、メダル獲得のための勝負などとは考えず、世界の舞台で思い切って全力を出し切るレースを見せてもらいたい。それが、必ず3年後の東京五輪につながるだろう。

 長く世界から遅れをとっていた女子個人メドレーにも、大橋悠依(東洋大学)という新星が現れた。日本選手権の400メートル個人メドレーでマークした4分31秒42の日本記録は、世界ランキング1位。ただ、この種目では、女王カティンカ・ホッスー(ハンガリー)が本番になると記録をあげてくる。過度な期待は禁物だが、大橋には長谷川、牧野と同様に、初の世界水泳選手権で周りを気にすることなく自分のレースだけに集中してもらいたいところだ。

 彼ら、彼女らは当然、3年後の東京五輪でもメダル候補になる。五輪翌年の今だからこそ、本物の強さを世界にアピールしておきたいところ。これだけ世界ランキング上位に名を連ねておきながら、今大会でメダルが獲得できなければ、「日本人選手には、記録で負けていても勝負をすれば勝てる」という印象を与えかねない。五輪翌年の今年だからこそ勝負強さを見せ、世界での[「格付け」が決まる絶好の機会を生かしたい。

 願わくば、メダルを意識してプレッシャーを感じるのではなく、自分の力を信じ、自分の泳ぎだけに集中してレースをしてほしい。それが、結果につながる最善の策なのだから。(文・田坂友暁)