イングランドでの2シーズン目で真価を問われるグアルディオラ監督(写真:getty Images)
イングランドでの2シーズン目で真価を問われるグアルディオラ監督(写真:getty Images)

 最初から上手くいくと考えてはいなかったと思う。

 これまでバルセロナ(スペイン)やバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)では就任1年目からタイトルを獲得してきた、ジョゼップ・グアルディオラ監督(愛称=ペップ)だが、マンチェスター・シティ(イングランド)ではプレミアリーグで優勝したチェルシーに勝ち点15もの大差をつけられて3位にとどまるなど、キャリアで初めてタイトルを1つも取れずにシーズンを終えた。

 バルセロナには、ペップが熟知しているサッカーと選手が揃っていて、必要な材料はすべて手元にあった。バイエルンは違う考え方、違う選手たちに、自らのアイデアを融合させる実験だったが、素材はバルセロナ以上だった。何よりもリーガ・エスパニョーラもブンデスリーガも二強リーグにすぎない。ライバル(レアル・マドリード、ドルトムント)を上回れば優勝できるリーグだった。

 プレミアリーグはそうではない。マンチェスター・シティは優勝候補だが、同じ都市にはマンチェスター・ユナイテッドがいて、リバプール、アーセナル、チェルシー、トッテナムもタイトルを狙える力を持っている。競争力がこれまでとは全く違うリーグなのだ。

 材料も揃っていなかった。例えば、バイエルンはバルセロナとは異なる考え方とプレースタイルのチームだったが素材はあったので、バイエルンの選手たちに新しいアイデアを浸透させることがペップのチャレンジだった。タイ焼きと今川焼きの味はほとんど同じだが、同じ成分でも流し込む型が違えば違う食べ物になるように、バルセロナで培われたアイデアをバイエルンに流し込むと、すっかりバイエルン風になっていた。

 具体的には、フィニッシュへのアプローチがバルセロナとは異なる。バルサではめったに使わなかったハイクロスは、バイエルンではメインのアプローチになっていた。バイエルンにはアリエン・ロッベン、フランク・リベリーのウイングがいて、本格的CFであるロベルト・レバンドフスキがいる。ペップの主な仕事は武器を最大限生かすための筋道をつけることで、確実にウイングが勝負できる状況を作ることだった。そのために複数のポジションを動かしながらの複雑なビルドアップを行っていて、それはペップのアイデアなのだが、目的はウイングへのボール供給にほかならない。

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