シティにも優秀な選手は揃っていた。ただし、必ずしもペップにとって必要な素材でもなかった。ジョー・ハートはイングランド代表のGKだが、足元の技術が要求水準でないためにレンタル移籍させている。力はあってもペップの構想とは合わなかったわけだ。DFもペップ流のビルドアップを行うには力不足で、バルセロナやバイエルンではめったに起こらないようなミスが頻発していた。ボールを確実に運ぶことはペップにとっては譲れない基礎部分であり、そこが弱かったのだからうまくいくはずがないのだ。来季に向けての大きな補強ポイントだろう。

 フィニッシュに関してはバルサ、バイエルンでそうだったように、武器の生かし方になる。シティのエースはセルヒオ・アグエロ。速いウイング(ラヒーム・スターリング、レロイ・サネ)という武器もある。アグエロは空中戦に強いタイプではないので、メインのアプローチはロークロスだ。ただ、バルサ時代のリオネル・メッシやバイエルン時代のトーマス・ミュラー、レバンドフスキと比べるとゴールゲッターが弱い。ガブリエル・ジェズスをシーズン途中に補強したものの、負傷であまり使えなかった。

 すべて揃っていたバルサ、素材はあったバイエルンとは異なり、シティでは素材の見極めから始めなければならなかった。補強によって素材を揃える2年目が実質的なスタートと見ていいのではないか。(文・西部謙司)