シリア戦で鍵を握るのはアンカーの山口蛍(写真:Getty Images)
シリア戦で鍵を握るのはアンカーの山口蛍(写真:Getty Images)

 6月7日に行われるキリンチャレンジカップ2017のシリア戦(東京・味の素スタジアム)は、翌週13日のワールドカップ・アジア最終予選、アウェーのイラク戦を見据えた試合になる。

 ハリルホジッチ監督は、3月のUAE戦で確立したアウェー戦法を踏襲するようだ。両インサイドハーフに香川真司と今野泰幸が並び、アンカーは山口蛍が入って逆三角形の中盤になる「4-3-3」。昨年10月のオーストラリア戦もそうだが、アウェーの指揮官は、この布陣を好む傾向がある。

 テストマッチのシリア戦で、どこまで「4-3-3」の練度を高められるか。

 注目プレーヤーはアンカーの山口蛍だ。センターバック2人との関係、両インサイドハーフとの関係。どちらの三角形にも組み入れられる山口のポジションは、まさに“日本のへそ”……あまり目立たないが、重要な役割がある。

 ひとつは、センターバックとの連係だ。3月のUAE戦では、まずいミスがあった。前半20分、GK川島永嗣のビッグセーブに助けられた場面だ。縦パスに対してセンターバックの森重真人が潰し切れず、山口と森重のポジションが重なる形で、最後尾にスペースを空けてしまった。センターバックが相手を追撃したら三角形の上下が入れ替わるように、山口はカバーに回る必要があるが、その連係が遅れた。

 今回の招集では、その森重がメンバーから外れ、よりガンガンと前でつぶす意識が強い昌子源か槙野智章が起用される見込み。となれば、山口のカバーリングはますます重要になる。

 正直なところ、山口はアンカーに向かないと思わなくもない。向かないというより、もったいないと言うべきか。UAE戦の後、山口は「そんなに動いてないので、あまり疲れなかった」と語った。アンカーというポジションは基本的に中央から離れず、センターバックの前にフタをする役目。つまり、運動量よりも戦術理解が大事になる。走力が魅力的な山口がアンカーをやるのは能力のロスにつながる。しかし長谷部誠がケガで離脱する中、この重要なポジションを任せられるのは経験豊かな山口の他にはいないのだろう。

 アンカーはセンターバックだけでなく、インサイドハーフとも連係が必要だ。前述したUAE戦の前半20分のピンチでは、今野と香川のプレッシングが重なって中盤のスペースが空いたところに縦パスを打ち込まれている。特に後半は今野や香川と山口の距離が遠くなり、中盤が間延びしてセカンドボールをUAEに拾われる展開が続いた。後半26分に香川に代わって倉田秋が投入されるとコンパクトに修正されたが、インサイドハーフふたりの動きにも山口は気を使い、コーチングする必要がある。

 山口は、日本のへそ。そこで蛍が輝けば、中東アウェーへの備えはばっちりだ。(文・清水英斗)