しかし、イチローが並外れているのは、そんな厳しい状況下でも変わらずに好成績を残し続けたことだ。10年連続打率3割、200安打以上、オールスター出場、ゴールドグラブ賞獲得……etc。マリナーズ時代に残した大記録は枚挙に暇がない。例え“自分勝手”だろうと、そうでなかろうと、最高レベルのメジャーで積み上げた実績に文句をつけるのは難しい。

 時は流れ、17〜19日のシアトル来訪で、イチローは地元ファン、関係者から再び暖かく迎えられようとしている。そんな動きは、昨季に3000本安打に到達したというだけでなく、マリナーズ時代のイチローのハイレベルで安定した活躍が改めて評価されていることの証に違いない。

「私が25年に渡ってメジャーで見てきた中で、最もしっかりと準備をする選手だった。完璧に準備し、常にハードにプレーしてくれる。それゆえに、これほど長くプレーすることが可能になったのだろう」

 イチローを誰よりよく知るマクラーレンはそう述べる。

 移籍して少し距離が離れた今でも、いや、距離が離れたからこそ、シアトルの人々もイチローがやり遂げたことの重さに改めて気づいているのではないか。継続することには大きな価値と意味がある。今週、マリナーズの本拠地であるセーフコ・フィールドでイチローに送られる大きな拍手と大歓声は、そのことを証明するのだろう。(文・杉浦大介)