古巣マリナーズとの試合へ臨むイチロー(写真:Getty Images)
古巣マリナーズとの試合へ臨むイチロー(写真:Getty Images)

 4月17日からシアトルで行われるマーリンズ対マリナーズの3連戦では、イチローに再び大きな注目が集まることは間違いなさそうだ。2001〜12年までプレーした古巣への凱旋シリーズ。マリナーズでの12年半で通算2533安打をマークした元英雄にとって、3年ぶりのシアトルでのゲームとなる。

「マーリンズにはマリナーズ史上最も偉大な5選手のうちの一人が属している。3000安打を達成したこともあって、温かいホームカミングになるはずだ。シリーズ最終戦のデイゲームではイチローの首振り人形も配られる」

 ウェブサイト「エメラルド・シティ・スワッガー」の3月30日付の記事では今年のマリナーズの注目シリーズの1つとして今回の3連戦が挙げられ、そう記されていた。首ふり人形(Bobblehead)はファンサービスのプロモーションとしては定番だが、対戦相手の選手のものが配られることは珍しい。43歳となった元スーパースターの帰還に、地元は歓迎ムードに包まれそうである。

 今回のシリーズを前に、地元紙「シアトル・タイムズ」も改めてイチローの特集記事を掲載した。イチローのマリナーズ時代から現在までの功績、変化、影響力を振り返るのがメインの内容。しかし、中にはこんな記述もあった。

「ファンも含め、多くの人々がイチローのスタイルにアジャストしなければいけなかった。ゴールドグラブ賞、200安打、打率3割を毎年達成するにもかかわらず、そこにはやっかみも存在した。一部のチームメイトたちはイチローを受け入れるより、反感を抱いた」

 長いマリナーズ時代、実際に良いことばかりではなかった。2008年には、マリナーズの一部の同僚がイチローのプレースタイルは自分勝手だと断罪し、チーム内が不穏な空気に包まれた、という報道がシアトル・タイムズでなされた。

「イチローも、自身が何人かのチームメイトから好かれていないことはわかっていた。私たちはみんな誰とでも仲良くやれるわけではない。イチローはとても賢明な男だから、それがわかっていて、彼の集中力は変わらなかった」

 イチローと公私ともに親しい関係を築いた当時のジョン・マクラーレン監督に昨夏話を聞いたとき、そんな答えが返ってきた。筆者と話しながらほとんど落涙しそうになったマクラーレンの表情を思い出せば、当時がイチローにとっても容易な時間ではなかったことは簡単に想像できる。

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