こうした米国追従外交への暗黙の了解の醸成が進むのに合わせて、安倍官邸と自民党は呼吸を合わせて、一気に「朝鮮戦争」への参戦に備える体制整備に入った。

 3月30日、自民党は、「日本も敵基地を攻撃する能力を持つべき」との提言をまとめ、安倍政権に提出した。

 提言では、敵基地攻撃能力の整備のために、トマホークなどの「巡航ミサイル」の装備などの具体策まで掲げ、北朝鮮とのミサイル戦争に備えて、イージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(終末段階高高度地域防衛)の導入にも触れている。国会での議論が全く行われないまま、話がどんどん進んでいるのである。

 表向きは、敵基地「攻撃」能力ではなく、敵基地「反撃」能力という言葉を使って、あくまでも、敵が攻撃してきた時だけのための敵基地攻撃だと言っているが、それにとどまると考えるのは人が好過ぎるだろう。例えば、米国が、「北朝鮮が在日米軍基地を攻撃するという確実な情報を入手した」と称して、日本を守るために北朝鮮を攻撃してやるから、一緒に戦おうと言った場合、自衛のための戦争だとして、日本が北を攻撃することにつながるであろう。そうなれば、日本が事実上の先制攻撃を行うことにつながる。

 これまで一貫して堅持してきた、日本の「専守防衛」という安全保障政策が完全に放棄されることになるわけだ。
 
 もちろん、トマホークなどの整備には時間がかかる。「今そこにある危機」への対応とは別問題だ。しかし、こうした動きの根底には、日本が、積極的に米国とともに戦争に参加することが日本の安全のためになるという考え方、さらには、対北朝鮮では、先制攻撃でミサイル戦争に勝つことが良策であるという危険な考え方が存在する。

 もちろん、米国が要請しても、自由に日本が断れるのであれば、その心配も少しは小さくなる。しかし、「世界中のメディアの前でここまですり寄ったのだから、安倍は、今後、トランプのどんな要求も断ることができなくなった」という米国共和党関係者の見方がある。確かに、あれだけ派手にすり寄って、固い握手を交わし、抱擁し合った姿を世界中に晒しておいて、トランプ氏の「一緒に戦おう」という誘いを断ることなど、誰にも想像できない。日本に選択の自由はないというのが実情だ。

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