7失点に肩を落とす田中将大(写真:Getty Images)
7失点に肩を落とす田中将大(写真:Getty Images)

 不調時でも試合を作ってくれる投手―――。1試合限りとはいえ、ヤンキースの田中将大が確立してきたそんな評判が揺らぐような投球だった。

 4月2日、トロピカーナ・フィールドで行われたレイズとの開幕戦で、田中は2回2/3で8安打を打たれて7失点。まさかの大乱調で、3−7で敗れる要因になってしまった。プレシーズンの間は5試合で防御率0.38とほぼ完璧だっただけに、この日の内容、結果に周囲は驚かされざるを得なかったのである。

「打たれているのはスプリットばかりだなと思ったが、投げるボールが他になかった。スプリットが別に良かったわけではないが、その中ではということ。他のボールは全然コントロールできていなかった。キャッチャーもましなのはスプリットだと思ったのだろう」

 試合後の田中のそんな言葉を聞けば、この日は持ち球のすべてが不調という厳しい状況だったことが伝わって来る。これまでの田中は序盤に不出来を感じさせても、試行錯誤の上で何とか修正してくるのが恒例だった。しかし、この日はそれすらも叶わなかったことを本人も認めている。

「ゲーム前はそこまですごく緊張していたわけではない。しかし、立て続けに1、2番打者にポンポンと打たれて、そこからおかしくなった」

 これまで多くの大舞台に立ち、しかもヤンキースでは3年連続の開幕投手だったことを考えれば、田中がそこまで緊張感を感じていたというのを意外に思う人もいるはずだ。それだけメジャー4年目の今季にかける思いが強いということだろうか。持ち球の不調に加え、開幕戦独特のテンションゆえに歯止めも難しくなり、自己最悪級の登板になってしまったのだろう。

 もっとも、幸いなのは、試合後に田中は体調に関しては問題ないと語り、故障の可能性を否定していたことだ。初戦の内容は確かに驚くほど悪く、せっかちなニューヨークのメディアは騒ぎ立てている。ただ、繰り返すがまだ1試合。注目度の高い開幕戦の結果が取りざたされるのは仕方ないが、ケガがない限り、危機論などを述べるのはまだあまりにも早すぎる。

次のページ