所属クラブで定位置を奪えず、代表からも遠ざかる宇佐美貴史(写真:Getty Images)
所属クラブで定位置を奪えず、代表からも遠ざかる宇佐美貴史(写真:Getty Images)

 ワールドカップアジア最終予選で苦しい戦いが続く日本代表。そんなチームの課題のひとつに、世代交代の遅れが挙げられる。過去、日本代表が出場したワールドカップでの世代構成を振り返ると、今起きている問題が分かりやすい。

 2010年ワールドカップ南アフリカ大会に出場した日本代表では、本田圭佑、長友佑都らが活躍した。チーム事情もあり、本大会でこそ出場機会を減らした(失くした)ものの、岡崎慎司、内田篤人らも、アジア最終予選では中心選手としてプレーしていた。

 彼らに共通するのは2008年北京五輪に出場した、いわゆる「北京世代」(1985~88年生まれ)だということ。南アフリカ大会後、さらに勢力を拡大した北京世代からは、前記した選手たちの他、森重真人、吉田麻也、青山敏弘らも、続く2014年ブラジル大会に出場している。

 本来であれば、2012年ロンドン五輪に出場した「ロンドン世代」(1989~92年生まれ)が、もっと日本代表の主力に食い込んできていいはずも、下からの突き上げは物足りず、世代交代が進まない。その結果、ブラジル大会後もチームの中心には北京世代が据えられたま。それが日本代表の現状なのである。

 では、北京世代とロンドン世代の違いは何か。2世代の間には、それほどまでに大きな力の差があるのか。そんな疑問を抱いてしまうが、それを解くひとつのカギが「国際経験」にある。

 FIFAが主催する世界大会のひとつに20歳以下の選手を対象とした、U-20ワールドカップがある。日本が初めてアジア予選を突破してこの大会に出場したのは、1995年大会。以来、日本は2年に一度開催されるこの大会に、2007年まで7大会連続で出場してきた。若くして世界レベルを体感することが刺激となり、その後の選手の成長に大きな影響を及ぼすことは言うまでもなく、ひいては日本代表の強化にもつながってきた。

 ところが日本は2009年、8大会ぶりにこの大会の出場を逃すと、2015年までアジア予選で負け続け、4大会連続で出場できなくなった。その7大会続いていたU-20ワールドカップの連続出場をストップさせたのが、ロンドン世代だったのである。

 例えば、野球での「松坂世代」などのように、不思議と特定の世代に優れた選手が集中するケースがある。サッカーで言えば、小野伸二、稲本潤一、高原直泰らを擁した「黄金世代」がそれにあたる。そうした現象が起こる理由を説明するのは難しいが、多少の差こそあれ、世代ごとに当たり外れがあるのが現実だ。

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