乱太郎30周年、人気の裏にある意外な努力とは? 「子ども相手だからこそ手を抜けない」

長期連載でも“ご存じもの”にはしない。はじまりはいつも読者へのごあいさつから(『落第忍者乱太郎 60巻』より)
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長期連載でも“ご存じもの”にはしない。...

落第忍者乱太郎 60
尼子騒兵衛著
978-4022750600
amazonamazon.co.jp

 1986年から朝日小学生新聞で連載を続ける『落第忍者乱太郎』が今年、30周年を迎えた。同作を原作としたテレビアニメ『忍たま乱太郎』も来年25周年を迎え、NHKアニメとしては最長寿番組だ。いまなお高い人気を誇り、幅広い世代に愛される作品の秘密はどこにあるのか。作者の尼子騒兵衛さん自身、当初はここまで続くとは考えていなかったという。

「私の子どもも一緒に見られるくらい続けられたらいいねと話していた友人が、今は孫と一緒に読んでくれています。友人にかぎらず、2世代、3世代で読んでくれている読者が増えました。冗談で話していたことが本当になってうれしいです(笑)」(尼子さん)

●丁寧な時代考証から生まれる“伝えたいこと”

 幅広い世代から愛される背景のひとつに、驚くほど丁寧な時代考証がある。同作はギャグ漫画でありながら、実は多くの資料に当たり裏を取って描かれているのだ。「子ども相手だからこそ、嘘をついてはいけないし手が抜けません」と尼子さんは言う。ギャグとして子どもに理解される表現はありだが、誤解が生じるようなものは描かない。乱太郎は室町時代末期が舞台だが、江戸時代に流通した寛永通宝がアニメに出てきたことがある。そのときは、再放送から寛永通宝を500円玉に変更してもらったという。

「歴史が大好きなので、資料に当たっていて面白いと感じたことは伝えたくなります。それに乱太郎たちが遭遇したらどうなるのか。一つ石を投げてやると、彼らが反応して勝手に動き出します。古典落語もプロ野球の珍プレー好プレーも、当事者が真剣だからこそ何度見ても笑ってしまう。大真面目なのに話が意図しない方向に転がって行く、その隙間に笑いが生じると思うんです。乱太郎もそうありたいので、真面目な部分を描くための努力を続けています」

 連載を30年続けていても、ネタに困ったことはない。テーマを決めたら、トイレやお風呂でもその資料を読む。連載に加え、アニメの台本チェック、ミュージカルの作詞など、やることは山ほどある。「ぼーっとしている時間があるのはもったいなくて仕方がなくて、何かしていたい。調べ始めるとびっくりすることがたくさん見つかって、子どもたちに伝えたいことが際限なく出てきます」。それを常にギャグに落とし込んで伝えてきた。

 流行は追わない。毎年新しい読者が生まれるので“ご存知もの”にはせず、いつも“初めまして”の気持ちを忘れずに描くことに決めている。

●いじめのない理想的な世界

 長年の人気を支える魅力のひとつは、いじめや裏切りのない理想的な世界を描いていることだ。「明るい気分になるために読むのがギャグ漫画だと思うんです」と尼子さん。尼子さんのもとには、「落ち込んだときに読むと元気が出る」「乱太郎たちがダメなりにやっていく姿に励まされる」という手紙が多く届く。

 登場するキャラクターたちは、それが優秀な忍者でも敵役でも、みんなどこか憎めない欠点がある。

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