そして迎えた最終セットは、いきなり錦織がブレークを奪う最高の立ち上がり。だが第4ゲームではサーブの入りが悪く、ブレークバックを許す。ところがサーブの入りが悪いのはマリーも同様で、続くゲームでは相手のダブルフォルトで得たチャンスを逃さず、錦織が再びブレーク。そうして4-3と錦織リードで迎えたサービスゲームでは、好調にポイントを重ねて40-0とリード。勝利へと大きく肉薄した。

 しかしここで犯したストロークのミスを機に、錦織のボールが途端に相手コートに入らなくなる。5連続でポイントを落とし、再びゲームは並行カウントとなった。

 試合の流れが目まぐるしく入れ替わるなかで、最後に勝利の女神が微笑んだのは、錦織だった。ゲームカウント5-5のマリーのサービスゲームでは、またも相手のダブルフォルトで得た好機を逃さない。ドロップショットで相手を揺さぶると、マレーの返球に必死に飛びつき、これが決まってブレーク。6-5とし、勝利まであと1ゲームに迫った。

 フルセットの死闘に終止符を打ったのは、錦織が最も得意とするフォアの強打。マリーの返球がネットに掛かった瞬間、3時間58分のドラマが終幕を迎えた。ウィンブルドン優勝、リオ五輪制覇を含め最近の27試合で1敗しかしておらず、“現時点で最強の男”とも呼ばれるマリーを破った錦織が、準優勝した2014年の同大会以来となる、ベスト4への扉を開いた。2年前果たせなかった悲願のグランドスラム制覇まで、あと2勝だ。