「ここまでやるか……」

 こういう他社への冷遇を目の当たりにすると、自国を優遇するというより、大韓航空とアシアナ航空至上主義にも映る。いや、空港建設を支えたのはこの2社ということなのか。

 一度、チェンマイに住む日本人の老人と一緒にソウル経由で日本に帰国したことがあった。老人は脳梗塞を患い、車いすでの移動だった。利用したのは大韓航空だ。チェンマイからの飛行機が仁川国際空港に着く。当然、旅客ターミナルだ。空港職員が用意してくれた車いすに老人が乗り、僕は彼の荷物を手に乗り換えた。旅客ターミナルには、一般の人が利用できない、車いす専用乗り換えエレベーターや通路が用意されていた。ものの10分もかからずに、乗り換えることができてしまった。

「この空港は便利だね」

 車いすに乗った老人が口を開く。

「そ、そうですね」

 以前、コンコースの隅まで延々と歩いた身にしたら、素直にはうなずけなかった。

 搭乗口で待っていると、コンコースに駐機しているチェジュ航空が見えた。

「大韓航空とアシアナ航空の乗客以外は乗客にあらず」

 そこまではいわないが……。

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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下川裕治

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下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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