昨年以降でも審判部批判(「子供でも分かる……」発言)、格下力士が立ち合いのかく乱戦法として用いるとされるだましなど、何かと話題のヒットメーカーになっている。理性を失ったかのようなダメ押しには今場所前の力士会で、審判部から直接的な表現ではなかったが注意もあった。これまでも土俵外の騒動も何のその、白星を積み重ねてきた白鵬。力士人生の成熟期を迎えており、ここは万人が認める大横綱としての立ち居振る舞いに期待したいところだ。

 場所前の調整は意欲的だった。荒汐、九重、友綱など積極的に出稽古し、初日3日前の5日には「ここ1年、場所前の木曜に調子を上げたまま稽古したのは久しぶり」と話すほど。不安視される左膝の痛みも「違和感も全くと言っていいほどない」と万全を口にする。最近は序盤戦がやや不安定で、初日の小結隠岐の海には昨年秋場所初日、2日目の宝富士にも先場所初日に敗れている。とかく緩みがちで体もなじまない場所序盤を、気持ちを引き締め無難に滑り出せば、2場所連続の賜杯は自ずと近づいてくるだろう。

 さて、幕内ではないが今場所を沸かせてくれそうな若武者がいる。新十両の宇良だ。4月29日の横審稽古総見終了後、守屋秀繁委員長も「今場所は十両の最初から結びの一番まで、長い時間、相撲を楽しめることが出来る」と関心を寄せている。史上4位の所要7場所で関取の座を射止めた173cm、127kgの業師。あの舞の海を彷彿させる俊敏な動きで相手を惑わし、十両昇進を決めた春場所でも、200kgを超す天風を手玉にとり館内を沸かせた。

 アマチュア時代に繰り出した珍手の居反りは、さすがにプロの世界では出せていない。1場所7番の幕下以下時代から、連日の15番を取る十両以上になり、そのチャンスも広がる。本人は真っ向勝負を言い聞かせるが、人目を引くピンク色の締め込みと合わせ、多彩な技の連発で土俵に新風を巻き起こしてくれそうだ。