大相撲春場所・千秋楽、結びの一番に臨む白鵬=伊藤進之介撮影 (c)朝日新聞社
大相撲春場所・千秋楽、結びの一番に臨む白鵬=伊藤進之介撮影 (c)朝日新聞社

 待望久しい日本人横綱誕生を稀勢の里が成就するのか、総取っ替えの三役陣の旋風はいかに、異能力士の新十両・宇良の珍手は見られるか―。大入りが続く大相撲は、8日初日の五月場所も新鮮な見どころ満載だ。ただ優勝争いとなると、予想は「定番」。ここ何年にもわたり、候補筆頭に挙げられる白鵬が軸になるのは間違いない。この絶対横綱の場合、勝敗はもちろんだが、その一挙一動からも目が離せない。

 春場所で自身が持つ史上最多記録を更新する36度目の優勝を達成。昨年名古屋場所以来の賜杯で、指定席ともいえる東の正位にも4場所ぶりに戻った。昨年初場所で大鵬を抜く史上最多33度目Vを達成。約9年を数える横綱在位、31歳という年齢、ライバル不在を考えると、大鵬越え後はモチベーションの維持が難しかった。

 その白鵬を“やる気”にさせてきたのが、目の前にぶら下がる目標の数字だ。年に1度開催のモンゴル相撲で6度優勝の父に、年6場所開催の大相撲なら「36回の優勝で並ぶ」と目標設定。ブランクはあったが春場所でクリアした。夏場所でいえば、あと1勝で史上1位の魁皇(879勝)に並ぶ幕内通算勝利がある。通算勝利では史上3人目の1000勝に、あと28勝。これも7月の名古屋場所で視野に入る。さらに1位の魁皇まで75勝だから、これも1年以内に達成可能。体力的な衰えは感じられず、気持ちを切らさないための目標設定もうまく調整できている現状から、白鵬時代はまだ続きそうだ。

 次々と記録を塗り替え王道を歩む白鵬だが、一方でその土俵態度には賛否両論の声が、かまびすしい。春場所ではダメ押しと見える2番に、千秋楽結びの一番で見せた立ち合いの変化。大阪のファンから痛烈なヤジを浴び、優勝インタビューで涙を流したシーンは記憶に新しい。

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