「まだ作品化できていないネタが100個ぐらいある」と話す伊勢田さん
「まだ作品化できていないネタが100個ぐらいある」と話す伊勢田さん
奇想天外な伊勢田作品の数々。日の目を見る日も近い!?
奇想天外な伊勢田作品の数々。日の目を見る日も近い!?

 1980年代の少女漫画をほうふつさせる少女キャラが、セーラー服で歌い、踊る……。音楽プロデューサー、中田ヤスタカさんがプロデュースしたモデル、三戸なつめさんのデビューシングル「前髪切りすぎた」(2015年4月発売)は、斬新で衝撃的すぎるミュージックビデオの内容で話題となった。アニメを手掛けたのは、神戸市在住の“孤高”のアニメ作家、伊勢田勝行さん(48)だ。

 原作から作画、声優、音楽、演出、監督までを1人でこなし、アニメ界のアウトサイダーとも呼ばれる伊勢田さん。会社勤めをしながら、帰宅後や休日の時間を利用して漫画やアニメの制作に励んでいる。画風は、小中学生の女の子が描くような、いわゆる“ヘタウマ”。決してうまいとは言えないが、なぜか引き込まれる。自らヒーローにふんした、特撮作品も手掛けている。

 三戸さんのミュージックビデオの依頼があったのは2014年11月ごろ。送られてきた写真本を参考に少女を描き、年末年始で一気に完成させた。ビデオの最後は少女の首から下がカニになるという驚きの展開が待っているのだが、これは「ちょきちょき」という音からイメージしたという。

 子ども時代は、「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」といったアニメの転換期。伊勢田少年は、アニメのキャラクターをまねしながら、発声方法や演技を研究した。周りの声が入らないよう、細心の注意を払ってラジカセでアニメを録音。自宅の座敷で1人、セリフを声に出して確かめていると、祖母から「悩みがあるのなら言いな」と言われたこともある。

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