コピーライターの長谷川哲士さん。面白法人カヤックから独立して株式会社コピーライター代表に
コピーライターの長谷川哲士さん。面白法人カヤックから独立して株式会社コピーライター代表に
付箋にアイデアを書く作業中
付箋にアイデアを書く作業中
本文中に登場したコピー作品。人気投票のシールも数多く集めている
本文中に登場したコピー作品。人気投票のシールも数多く集めている

「僕のコミュニケーション方法と、女子高生たちのそれに、根本的な違いなんて特にないですよ(笑)」。共立女子中学高等学校での特別授業を終え、筆者の質問に頭を掻きながら恥ずかしそうに答えるのは、コピーライターの長谷川哲士さんだ。そうは言うものの、彼のコミュニケーションに対する明快な考え方には学ぶべきものがあった。

●プロのコピー作りを女子高生が疑似体験

 1月30日、朝8時30分。高校3年生の女子生徒40人に向けた長谷川さんのコピー講座が開講した。同校では、生徒の視野を広める目的で「特別教養講座」という授業がたびたび行われている。今回は、長谷川さんの指導を受けながら生徒たちが「わが校の入学者を増やすためのコピー作り」と、「自分が入りたいサークル、およびその名前を考える」の計2つの課題をこなす。
 
 はじめは初対面の長谷川さんの様子をうかがっていた彼女たち。が、経歴を紹介する場で緊張は一気に吹き飛んだ。「あ、いま東大哲学科出身と紹介してもらいましたが、東京大学じゃなくて東洋大学です。略したらうちも東大ですから(笑)」という長谷川さんの発言に、会場のあちこちから笑いが。上々のつかみに続けて、コピーとは「人の心をキャッチする言葉」であると定義したあと、1つめの課題が始まった。

 テーブルに用意された付箋に、各々思いつくまま、わが校の売り込み文句を書く。ひとりあたり数個のアイデアが出たら、4人のグループ内で発表しあい意見交換。各人のベスト作をさらに精査し、ひとりひとつのコピーを付箋に書き込む。完成コピーを皆が席を立って見て回り、いいと思うものが書かれた付箋にシールを貼りあった。

 生徒たちが作ったコピーには「2000人でごきげんよう」のように、同校で日常使われるあいさつと全校生徒数にちなんだ作品があるかと思えば、同校の立地の良さから語呂よく発想した「駅チカ 人チカ 夢チカ」や、その伝統を威厳をもって問いかける「130年の歴史を継ぐ気はあるか」など、作品の方向はさまざま。

 生徒間での投票でも最後の作などは多くの票を集め、「格好いい」との評価も。筆者も見て回ったが、生徒の評価と同じく、こういう見目のいい言葉を長谷川さんも講評で取り上げるのだろうと思っていた。

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