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取材費を“募金”で…クラウドファンディングはジャーナリズムを救えるか?

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募金でジャーナリズム?!

募金でジャーナリズム?!

 近年、日本でも耳にするようになった「クラウドファンディング(CF)」という資金調達方法。これまではチャリティーやNPO活動などで利用されることが多かったようだが、ここに新たな活用法が出てきている。

 CFとは何か事業などを始めたい人が、その費用を一般の人から募るというもの。ネット上のCFサービスを使って募集をかけることができる。事業の起案者は、事業の詳細を明記し、目標額を設定してCFサイトで支援を募る。目標額に届かなければ、集まった支援金は返却されるシステムが多い。

 支援金はまったくの寄付の場合もあるが、ものによってはその額に応じたリターン(事業で製作した商品やサービスを受けられる権利など)を提供するケースもある。

 日本でもCFサービスを提供するサイトは増えており、行われている事業も多種多様だ。「発展途上国に学校を建てたい」「伝統芸能を守りたい」「自主映画を制作したい」……と、その分野はチャリティーからアートまで多岐にわたっている。

 そんななか、近年、ジャーナリズムの分野にCFを活用する例が増えている。

 例えば「CAMP FIRE」というCFサイトをみると、「ベトナム紹介サイトをリニューアルしたい」「NYのベンチャー企業を現地取材したい」などのプロジェクトが立ち上げられ、いずれも目標額を達成している。また、「READY FOR?」というCFサイトでは、「被災した岩手県大槌に地域メディアをつくる」というプロジェクトが目標額を達成し、250万円近い支援金を集めた。

 ライターの椎名桂子さんも、ジャーナリズムの分野でプロジェクトを立ち上げたひとりだ。彼女のプロジェクトは「体操・新体操の情報を毎日発信する取材・報道活動を続けたい」というもの。

 椎名さんはかねてよりライターとして活動していたが、娘が新体操を始めたのをきっかけに、個人的に競技の取材を行うようになった。新体操を見ていて、その競争の厳しさに対して注目度があまりに低いと感じたことがプロジェクトを立ち上げた理由だ。

「新体操は幼少期から競争が厳しく、競技の特性からいっても、柔軟性を高めたり、体重管理をしたりと大変なことが多いように感じていました。にもかかわらず、マイナー競技であるためあまりにも注目してもらえない。日本でトップレベルの選手でもほとんどメディアに取り上げられることはないし、ましてやその下となると、なおさらでした。そういった選手たちに『見ている人がいるよ』ということが伝えられたらいいなと思い、まずは個人ブログで取材記事を書く活動を始めました」(椎名さん)

 椎名さんは新体操選手やチームを取材する活動を開始し、個人ブログで発信した。次第に出版社やウェブサイトに売り込みをするようにもなり、記事掲載にこぎつけたこともある。現在は「yahoo!ニュース個人」や「Gymnastics Lovers」といったサイトでも執筆もしているが、いずれも多少のインセンティブはあるものの、交通費といった取材費用はほぼ持ち出しになる。

「出版社に新体操の企画を持ち込んでも『それって売れるの?』と断られることが多かったですね。でもウェブサイトのページビュー(PV)から、新体操には多くはないけれど、必ず読みたいと思ってくれている人が一定層はいるんだ、というのは感じていました」(同)

 そこで目を付けたのがCFだった。新体操の取材活動費を集めるというプロジェクトを立ち上げ、支援者にはリターンとして、その年の大会を振り返る「新体操イヤーブック」を送ることにした。支援額は1口2千円から5万円。目標は最低額の50万円とした。まずは目標額を達成することが最大の目標だったからだ。

 プロジェクトは昨年12月20日から開始した。すると驚きの展開があった。

「プロジェクトの開始3日で、目標額を達成したんです。『READY FOR?』の担当の方も驚いていました(笑い)」(同)

 これまでウェブサイトのPVでしか量ることのできなかった「一定層」の思いを、リアルに感じられた瞬間だった。支援総額は1月22日時点で91万6千円。当初の目標額を大きく上回るが、決して十分ではないようだ。

「目標達成できないのが一番困ると思ったので、最低額に設定したのですが、50万円といっても、イヤーブックを制作すれば、ほとんど手元に残らない額なのです。ウェブサイトでの取材費や、カメラマンなど協力スタッフへの経費を厚くするには、もう少し支援が必要ですね」(同)

 プロジェクトは2月10日まで支援を募集しているとのこと。最終的にはイヤーブックを販売し、その収益で取材活動費を賄える形を目指すという。

 実はこのように、個人が報道の資金調達にCFを使うという動きは、数年前から海外でも見られていた。アメリカでは取材費用の調達をメインに行う、ジャーナリズムに特化したCFサービスが登場しており、イギリスではCFで調達した資金をもとに新たなメディアが立ち上がったという話もある。

 ウェブの普及とともにメディアの形は急速に変化してきた。CFのように、情報を必要とする人からの支援を受けて活動するというのも、これからの新しいメディアの形になるかもしれない。

(ライター・朝比奈ゆう)


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