まるで大人の駄菓子屋! 老舗立ち飲み屋から生まれた「酒販機」の魅力 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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まるで大人の駄菓子屋! 老舗立ち飲み屋から生まれた「酒販機」の魅力

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はるやまひろぶみdot.#お酒
開業当初からある焼酎の酒販機2台(左)と日本酒メーカーの依頼でサンシンが製作した日本酒の酒燗機(右)

開業当初からある焼酎の酒販機2台(左)と日本酒メーカーの依頼でサンシンが製作した日本酒の酒燗機(右)

カウンターに並べられたつまみ。その場で支払って持っていく

カウンターに並べられたつまみ。その場で支払って持っていく

100円玉を用意して、好きな酒とつまみを好きなだけ。両替もしてもらえるのでご心配なく

100円玉を用意して、好きな酒とつまみを好きなだけ。両替もしてもらえるのでご心配なく

自分で焼く焼き鳥も人気だ。鶏肉はこだわりの国産肉

自分で焼く焼き鳥も人気だ。鶏肉はこだわりの国産肉

 立ち飲み屋といえば背広姿のおじさんが安く飲める憩いの場……というのは、もはや昔の話。いまや若い人にも人気で、立ち飲み屋で“女子会”が開かれることも多いという。

 そんな立ち飲み屋で今じわじわ増えているのが、「酒販機」、いわゆる酒の自動販売機だ。缶やワンカップの自販機ではなく、100円硬貨を入れるとコップに直接酒類が注がれるタイプの酒販機で、導入する店が少しずつだが増えてきている。

【ニューカヤバと酒販機の写真こちら】

 今回は、女子だけでも楽しめて酒販機を新規導入した立ち飲み屋……とは真逆の老舗立ち飲み屋「ニューカヤバ」を紹介したい。なにを隠そう、この店こそが酒販機発祥の店なのだ。

 まずどこが真逆かというと、この店、女性だけの入店はお断りという決まりがある。開業時に先代の社長が決めたもので、開店した1964年当時、サラリーマンがたくさん立ち飲みしているところに女性がいるのはよろしくないと考えてのことだという。現在は二代目社長である先代の奥さんとその娘さんが店に立っているのだが、その伝統はしっかりと守られている。二代目社長のお母さんは、テレビの取材で来た女性リポーターを容赦なく門前払いにしたという逸話があるほど。ただし、人によっては入店を許すこともあるらしい。

 世間では「男性に連れて来られた女性は入店可」という不文律があるようだが、これも店がそう打ち出している決まりではない。「入れないときは入れない」のだという。とはいえ、ほぼ満員の店内にポツリポツリと女性の姿が見られるのがいつもの光景だ。

 店内にはずらりと並ぶのは、9台のコイン酒販機だ。焼酎類が6台、日本酒が2台、ウイスキーが1台となっている。そのうち、開店当初から50年以上働いているのは3台で、機械メーカーとコラボレーションして特別に製作したものだ。

 つまみはカウンターに並べられた150円からの小鉢をその場で支払って持ってくる。焼き鳥は1本100円で、串打ちされた生肉を店内奥にある焼き場で客自身が焼くセルフスタイル。このシステムも隠れた人気となっている。

 店内に4つあるテーブルは、円形で中心に灰皿が据え付けられた古いタイプのもの。ほかにも50年以上前の扇風機、焼き場の丈夫な換気扇。どこを見ても歴史を感じずにはいられない。

 ツマミは並べられているし、酒は酒販機から注ぐので大声で店員を呼ぶ人はいない。はじめて来たスーツ姿のおじさんが酒販機の前で、「おお……」とか「ほほう」などといいながらどれにしようか選んでいる姿は、失礼ながらちょっとかわいく見える。小銭を握ってどれを買おうか思案する姿は、まるで子どものようだ。二代目社長はさしずめ駄菓子屋のおばちゃんといったところか。

 立ち話で談笑する酔客が100円玉を持って自分で酒を注ぎに行き、氷を入れてテーブルに戻る。100円分の酒なので、1杯ごとに違う銘柄を楽しむこともできるのがいい。こうした光景が半世紀以上変わらず続いている。

 東京オリンピックの年にオープン。以来店に立ち続けるお母さんは、2020年に予定されている2度目の東京オリンピックもここで迎えることになる。この歴史はこの店だけのものでまねできるわけはないが、酒販機を並べたこのニューカヤバスタイルを参考にした立ち飲み屋が増えることで、大人の駄菓子屋がまた一つ増えることを期待したい。

(文・写真/はるやまひろぶみ)


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