これまでに約3000種類のフリーペーパーを扱ったという東京の専門店「ONLY FREE PAPER」のオーナー、松江健介さん(33)によると、「専門的な分野を取り上げたものや、地方発の特徴的なものなど、まったく興味がない人でもおもしろく読めるものが出てきている」という。

 松江さんのおすすめは、縄文時代をテーマにした「縄文ZINE」だ。人間国宝が集めた土偶や土器のコレクション特集、可愛らしい女の子に土偶と同じポーズを取ってもらう、読モならぬ「土偶(どぐ)モ」コーナーのほか、“縄弱”(縄文弱者)のための質疑応答コーナー、土器の専門学校に通う「どきお」の漫画など、縄文にまつわる魅力が余すところなく取り上げられている。

 他には、囲碁を取り上げた女性誌のような「碁的」だ。走り幅跳びをしながら、出産しながらと、さまざまな状態で打つ碁を表現した「エクストリーム碁」や、囲碁漫画に登場するイケメン棋士との妄想デート、ワインで碁を打つ「ワイン碁」など、ざん新な企画が目を引く。また、地方で暮らす人々の日常を美しい写真やほのぼのとした文章で描いた徳島発の「あおあお」もおすすめだ。

 資生堂の「花椿」やリクルートの「R25」など、企業が発行するものがウェブ版に移行する中、収入やマンパワーが不安定なフリーペーパーは今後どうなるのか? その点について松江さんは、「インターネットが普及し、無料である程度の情報を得ることに抵抗がなくなっているため、無料の紙媒体はニーズに沿っているのではないか。まだまだ可能性があるメディアだと思う」と話す。

 また、「プロがかかわっているものもあるが、自分の好きなことや地方を発信したい!という強い思いで作る『未完の美しさ』のようなものがフリーペーパーの魅力。今あるものがなくなっても、その分次々と新しいものが出てくるだろう」と期待する。

 読めば読むほど奥が深いフリーペーパーの世界。貴方の住む街や興味があることに関するフリーペーパーも探してみれば、きっとありそうだ。

(ライター・南文枝)