DIYで黒板をつくって設置。木枠×合板に壁紙を貼っている。大きなモノクロカレンダーが映え、リビングのアクセントとしての効果大(人気ブロガー&インスタグラマーのMACKYさんのお部屋)
DIYで黒板をつくって設置。木枠×合板に壁紙を貼っている。大きなモノクロカレンダーが映え、リビングのアクセントとしての効果大(人気ブロガー&インスタグラマーのMACKYさんのお部屋)

 アプリLINEのCEOを務めていた森川亮氏著『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)が、ビジネス書のベストセラーにランクインし、今やすっかり浸透した「シンプル」というキーワード。ビジネス界だけではなく、「暮らし」においてもブームの兆しが見え始めている。

 欲しいと思うものを自由に購入し、たくさんのものを持つことは、豊かさの象徴のはずなのに、なぜ人はシンプルに暮らしたいと願うのだろうか?

 エッセイスト、雑貨店店主、花教室主宰など、様々な分野で活躍している17人のシンプル暮らしを取材した『シンプル暮らしrules』(朝日新聞出版)では、彼らの生活からヒントを得た、まねしやすそうな9つのルールを紹介している。その中の一つに「書くためのもの、火にかけるものなど、同じ用途のものを取り出して並べてみる」というルールがある。

 ボールペン、鉛筆、クレヨンなど、書くためのものを、文具入れだけでなく、家中全てから探出し、テーブルに並べてみる。同じことを、鍋やフライパン、やかんなどでも試してみる。実際に出して並べてみると、その多さにびっくりする。そうすることで、不要なものがいかに多いかを実感することが大切なのだという。

 同書で紹介されている人の中には、ボールペンは家中で2本、鍋類もフライパン、無水鍋、土鍋の3つで十分だという強者も。ただ、全員に共通しているのは、全く物を持たないというのではなく、不必要なものを持たないという点だ。

「単に“ものを捨てればいい”と思っているかたが多いようですが、その前に自分の好みや暮らしのスタイルをじっくり考え、見極めることが必要だと思います。それがはっきりしていないから、たくさんのお店を見て歩くことになり、選ぶときにも迷ってしまう。反対に自分の暮らしのスタイルさえ分かっていれば、おのずとシンプルですっきりになるんです」

 整理収納アドバイザーのLinenさんは、同書の中でこう語っている。ものを捨てる、処分することだけを目的にしていては、シンプル暮らしにはならない。自分の好きなもの、好きな色、家族の好きなスタイルを見極めて、それ以外のものは家に持ち込まないようにする。お気に入りのものが一つあれば用は足りるのだということが「シンプルに暮らす」ための、最も重要な哲学なのかもしれない。

 シンプルは部屋だけではない。シンプルな素材の魅力に気づけば、料理はよりおいしくなり、服の管理法を見直すだけで、毎日の着こなしは自分らしいスタイルに一歩近づく。全てのルールをまねることは無理でも、まねできそうなことから“シンプル”に始めてみるのはいかがだろうか。

 暮らしやすさを追求した先にシンプルがある。つまり、シンプルは“目的”ではなく“結果”なのだ。だから人は、シンプルな暮らしに憧れるのかもしれない。