「タミヤ プラモデル ファクトリー 新橋」のミニ四駆売り場
「タミヤ プラモデル ファクトリー 新橋」のミニ四駆売り場
「タミヤ プラモデル ファクトリー 新橋」にあるサーキット場。平日夜は、大人たちの憩いの場となっていた
「タミヤ プラモデル ファクトリー 新橋」にあるサーキット場。平日夜は、大人たちの憩いの場となっていた

 今、巷ではミニ四駆が“第3次ブーム”と言われていることをご存じだろうか?1980年代から90年代、小学生男子を中心に爆発的なヒットを呼んだ「ミニ四駆」は、現在30~40代の男性であれば、1度は手に取った事がある定番の“おもちゃ”だった。それが20年の時を経て、これまでとは明らかに違う、“おもちゃ”という枠組みを超えたマーケットに広がっているという。

 現在、ミニ四駆の「聖地」と呼ばれるのが、東京・新橋にある「タミヤ プラモデル ファクトリー 新橋」だ。都心最大級のサーキット場とミニ四駆売り場には、週末はもちろん、平日であっても来場者が途切れる事はない。

「新橋という土地柄もありますが、平日はほとんど大人の方の利用ですね。もちろん週末は子どもの姿も多いですが、やはり大人の利用がかなり多いので、土・日曜と祝日の10時から16時は、『ファミリータイム』として、子どもや親子で利用できる時間にしています」(ストアマネージャーの半谷孝道さん)

 さらに、そのサーキット場と売り場には、女性客の姿も見られる。そして接客するスタッフにも、女性が少なくない。かつてミニ四駆に熱狂した男性であればわかると思うが、以前はこうしたショップやサーキット場には、女性の姿はまったく見られなかった。

 この利用者層の変化こそが、“第3次”ブームの最大の特徴であると半谷さんは言う。

「一般的には今のブームは“第3次”と呼ばれ、それを特に否定するつもりはありませんが、我々としてはミニ四駆が“文化”として定着したと捉えています」

 そもそも「“第3次”ではなく“第2次”では?」と思うかつてのミニ四駆ファンもいるだろうが、実は80年代後半にアニメ「ダッシュ!四駆郎」などで一世を風靡した第1次ブームの後に、“第2次”があったのだ。90年代半ばから後半、アニメ「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」のヒットとともに、子どもを中心に人気が再燃。アニメに女の子が登場したことで、女の子もミニ四駆を手に取るようになったという。

そして今回の“第3次”――もとい、半谷さんの言う“文化”の定着へとつながった大きな要因はいくつかあるが、なかでも現在メディアで活躍する芸能人たちが、ミニ四駆を大人の遊びとして取り上げはじめた事にあるという。

「若手男性アイドルや人気お笑い芸人の方がこぞってミニ四駆を取り上げ、これまでミニ四駆に縁がなかった人たちにも一気に市場が拡大しましたね。特にアイドルの影響はすさまじく、女性ファンは確実に増えました」

 大人も子どもも、男性も女性も。誰もが親しむ存在となったミニ四駆は、今や家族が一緒に楽しむ“娯楽文化”であるという。しかもそれは単なる遊びではなく、“子育て”にも現れ始めていると、半谷さんも驚きながら語る。

「一から自分で作る事でモノを大事にする、細かい作業で集中力が高まる……など、ミニ四駆というアナログなものを“作る”行為が、子どもにとっていい影響を与えているようです」

 さらにそのなかで、親が子どもに教えるという機会も出る事で、失われつつある親子の上下関係が保たれるという効果もあるそう。ただその点に関しては、半谷さんは少し不安もあるという。

「意外に女性のマシンが速くて、お父さんよりも速かったりするんです。そうなると、家庭の中でのお父さんの立場が少し心配で……」

 ミニ四駆にも“女性進出”の波が押し寄せているようである。

(ライター・種藤潤)