藤原:『西遊記』では水墨画のイメージで描いていました。仕上げはパソコンでやったんです。ちょうど個展を開いた時期で、会場に机を持ち込んで全部そこでやりました。できたらアシスタントに渡してスキャニングして、仕上げはデジタル。この見開きもかなり色調整をして、新品というか、昨日描き上がったふうに調整しています。

――ほかの先生も、みなさんこの企画を本当に面白そうだと言ってくださいました。

藤原:子どものころに学習漫画を読みましたが、とても楽しめるような代物ではなかったというイメージがあったので、バカにしちゃいかん、子どもはちゃんと分かるんだ、と思いながら描きました。

――村上もとか先生は「久しぶりに子ども向けに描くのがうれしい」と。安彦良和先生は「子ども向きに限定する必要はないよ、面白いから大人も喜んで読むよ。僕は勝海舟を描きたいな」とおっしゃいました。

藤原:作家のラインナップは充実していますよね。

――日本の漫画界を引っ張っている人たちが協力してくれました。若手の先生はベテランの中でやれると必死で頑張っていました。

藤原:結果はあまり意識はしていませんでしたが、売れたということは、誰もやっていないことをやったからではないでしょうか。ありそうでなかったものがちゃんと形になった。新鮮だったし、漫画家がみんな本気だということが伝わったんだと思います。

――450人の歴史人物を描き分ける付録カードも大変でした。あまり資料もなかったし。

藤原:そのほうが逆によかったんですよ。資料が残っているような時代になって、なんかつまんなくなってきてしまう。背広姿が増えてきたときに、描いていて楽しくないなって。あと僕は、かっこいいって言われている義経などは、かっこわるく描きたくなってしまう。(笑い)思い入れがある人には叱られるけど。でも毎号(50号まで)9人ずつやり遂げた達成感はありました。

――再刊ですが、当然初めて出会う人がたくさんいます。どんなところを見てほしいですか。前回はこの本を読んで歴史が好きになったら、学者になりたいという子どもたちがたくさんいました。

藤原:歴史人物に感情移入するため、子どもたちにアピールするため最良の道具ですからね、このシリーズは。歴史が好きになるきっかけって、その人物に共感を覚えて、惚れるところから始まりますからね。
 
※「週刊マンガ日本史改訂版」は全101号。500円(創刊号特別価格180円)。2009年10月から刊行した「週刊マンガ日本史」と「週刊新マンガ日本史」計101冊の発行順を変更し再刊行するもの。マンガ、記事(一部更新)の内容は同じ