池上彰さんと佐藤優さんの対談が掲載されているAERA 11月10日号※詳細はこちら
池上彰さんと佐藤優さんの対談が掲載されているAERA 11月10日号
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 働けど働けど豊かになった実感は持てない。一部の富裕層が現れても、社会の格差は深刻になるばかり……。先行き不透明な現代、フランスの経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』が世界的ベストセラーになるなど、資本主義の危機が話題になっている。

 資本主義の本質を明らかにした古典中の古典といえば、やはりマルクスの『資本論』だろう。しかし、長編なうえに難解なことでも知られるこの本、タイトルを聞いたことはあっても、手に取ったこともないという人がほとんどではないだろうか。その『資本論』をめぐって、わかりやすい解説で定評のある池上彰さんと、深読みが持ち味の佐藤優さんの二人が徹底討論するというのだから、見逃すわけにはいかない。現代日本の知の水先案内人であり、ともに『資本論』についての入門的な著書のある二人の対談は、「AERA」11月10日号で実現した。

 顔を合わせるなり、どの訳本で読んだかという『資本論』談義に。池上さんが「マルクス経済学をちゃんとやっている大学」だから慶應を受けたと明かすと、佐藤さんが「池上さんは労農派的」と指摘し、講座派か労農派かといった「日本資本主義論争」に依拠したマニアックな話題へと、話は尽きない。

 今、なぜ『資本論』が注目されるのか。二人はこう見る。

「ソ連が崩壊し資本主義が勝利したとなって、もう革命がおこる心配がなくなった。そこで資本主義のやり方でいいんだと言っているうちに、社会主義革命が起こる前の、マルクスが『資本論』で書いていた当時のような状態に戻ってしまった。そこであらためて資本主義ってどうなっていくんだろうという危機感が出てきて、『資本論』をもう一度読んでみようという人がでてきたんじゃないでしょうか」(池上さん)

「それがマルクス主義の系統の人から出てこず、ほとんどは近代経済学の人から出てきている。(中略)アメリカの超富裕層がインサイダー取引なんてやっていて、公正な市場なんかないということを自分の皮膚感覚として感じたというのは大きい」(佐藤さん)

 池上さんがわかりやすく解説すると、佐藤さんが掘り下げる。見事に息のあった掛け合いが繰り広げられ、「いま」というこの時代の、リアルな『資本論』の読み方が示されてゆく。

 閉塞感と焦燥感で混迷を極める高度資本主義社会。出口が見通せないこのシステムのなかで、いかに生き延びるか――。『資本論』を学ぶことでこの社会を相対化し、このシステムだけがすべてではないと知ることができる。資本主義社会の構造を見極めることによって、この状況を生き抜くことができる。それが二人の出した答えだった。

 サバイバルのための知恵の書として、現代人必読の『資本論』。特集には、あまたある訳本それぞれの特徴や読破のコツを佐藤さんが指南するコラムもある。二人の議論を手がかりに、あなたもこの大作を紐解いてみてはいかがだろうか。