昨年、アルバイト従業員が店の商品や設備を用いて、過度の悪ふざけ行為をカメラなどで撮影しTwitterに投稿、拡散、ネット上で非難が相次ぎ企業が謝罪するという、いわゆる「バイトテロ」が多発したのを覚えているだろうか。

 謝罪だけではすまず、一部のチェーン店や個人経営の飲食店が閉店に追い込まれる事態になり、逮捕者まで出した一連のこの事件は、ネットを賑わし、テレビや新聞などでも報道され、ちょっとした騒動となった。

 彼らはなぜ、考えもなしにソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿し、炎上を繰り返したのだろうか? 専門家たちがこぞって分析したこの問題も、結局はハッキリとした答えが出ないまま、事態は収束。我々の中に残った“違和感”の正体は不明のままだ。

 精神科医・香山リカ氏の新著『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』(朝日新書)は、このようなSNS上で感じる違和感をテーマとした一冊。ひたすらSNSで私生活自慢をする人、またSNS上で、事実関係を無視してでも韓国や中国に対して批判を繰り返すネトウヨ(ネット上で右翼的発言をする人)などに注目し、SNSへの違和感の正体を分析している。

 その中で、彼女は“あけすけ”な書き込みこそ、SNSに対する違和感の要因であるとしている。「分娩台なう」とTwitterに書き込み、しばらくして「産まれた〜!」と新生児の写真をアップする女性を例に挙げ、なぜ、このように人はSNSとなると“あけすけ”になれるのか、と問いかける。

 香山氏はこう分析する。

 かつてネットは匿名性、顔が見えないといった特徴から「嘘をつくのは当たり前」という風潮があった。しかし実名登録を行うFacebookの登場もあり、SNSではこの前提は成り立たなくなった。つまり、SNSへの書き込みは嘘をついてはいけないという意識が強くある、というのだ。

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