SNSに「高級フレンチを食べた」と書き込みたい場合、実際に行かずとも写真をネットで探して適当に感想をつければ「食べたこと」になる。一昔前のネットであれば、こういう嘘がまかり通っていたが、最近は「本当に出かけた場合のみ書き込む」または「書き込みたいから高級フレンチに行く」のが一般的だという。

 中には「今日は寝坊したのでインフルエンザとウソついてバイト休んだ」とわざわざ正直に書き込み、それがもとでアルバイト先から解雇される問題にまで発展した学生もいるとか。

 さらに香山氏は、今、SNSで主流になりつつある「一か八か型コミュニケーション」という別の問題も紹介している。

 SNSの世界では文章のスリム化が進み、「長文から短文」「短文からワンフレーズ」さらに「文字から画像」へと、確実に移行している。こうなると、自分が投稿した情報が相手にどう受け取られるかは二の次で、とにかくリアルタイムでどんどんアップしていくだけになり、自分の思いが正しく伝わるかどうかは相手次第。香山氏はこうしたギャンブル要素の強い情報発信を「一か八か型コミュニケーション」と名付け、その状態が一般化してきていると分析する。

“あけすけ”なつぶやきと「一か八か型コミュニケーション」に侵され、微妙な振る舞いが横行する現在のSNSの世界。他人はともかく、自分はこうはならない、と誰もが思っているだろう。ただ、「他人は自分を映す鏡」という言葉もある。本書を読んで、自分が本当に微妙な振る舞いをしていないか、一度、わが身を振り返ってみてはいかがだろうか。