ラオスの農民風の衣装を着こなして客を呼ぶ
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伝統的な衣装をまとってのダンスも大盛況
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ビアラオは軽い口当たりでゴクゴク飲めて、日本人にも評判
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フェスのために来日した伝統舞踊の踊り子たち。「また日本に来たいです!」と語っていた
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 5月24-25日、代々木公園でラオス・フェスティバル(通称ラオフェス)が行なわれた。前の週に同じ場所であったタイ・フェスティバルのほうが古株だが、こちらも目覚しい集客力を見せつけ、関係者を驚かせている。

 タイと隣接し、インドシナ半島の中央山岳部を占めるラオス。アジアでも特に静かな内陸の山国で、これまでは訪れる日本人も少なく、知る人もわずかだった。

 それがここ数年で、変わりつつある。

 ラオフェスは、2007年からタイフェスを追随するように始まった。隔年または3年ごとに開催されて今年で4回目。そのたびに着実に来場者は増え、今年は18万人を数えたという。30万人を集めるタイフェスを猛追しているのだ。

 パパイヤのサラダや米麺など独特のラオス料理のブースには長い行列ができた。「アジアでいちばんおいしいビール」と呼ばれることもあるビアラオが飛ぶように売れていく。

 来場者の多くは家族連れや友人同士のグループ。若い女性の姿が目立つ。

「今までのラオフェスは国際機関やボランティア関係者の出店が多く、来場者も援助関係の人々が多かった。それがいまでは、観光を前面に押し出している。ラオスを訪れる日本人は年々、増加しています。ラオフェスの来場者も、実際に旅行に行ってラオスを好きになったという人が多い印象です」(ラオス大使館関係者)

 街全体が世界遺産に指定されている古都ルアンパバン、メコン河の雄大な眺め、エコツアーの素晴らしさなど、欧米ではラオス旅行が一大ブームとなっている。それが日本にも伝わりつつある。ラオフェスでも旅行会社や航空会社がブースを並べ、来場者の人だかりができていた。

 タイ人気の波及効果もあった。タイをきっかけにアジアに興味を持った人々が、隣国であるラオスにも行ってみようと、タイフェスに続いてラオフェスにもやってくる。

 日本とラオスの間にはまだ直行便がない。しかし昨年、安倍首相がラオスを公式訪問した際に、将来的な直行便の開設に向けて航空協定の締結をすることを検討すると表明。

 これを受けてラオス国営航空が、今年12月の就航を目指して国土交通省と協議をしている。

「行った人はみな、ラオス人のホスピタリティと穏やかな笑顔に癒されて帰ってきます。“アジアの純情”と呼ぶ人も多い国です。直行便ができて行きやすくなれば、日本でもラオスブームが起こるのでは」と話す旅行業者もいた。

 日系企業のラオス進出も増えている。人件費が高騰し反日運動の盛んな中国を避ける「チャイナ+1」、タイの政治不安や洪水のリスクを避ける「タイ+1」の流れは、ラオスにも向かっている。

 ラオス中部の都市サワンナケートには政府主導の経済特区がつくられ、ここにトヨタ紡績やニコンが進出したことが話題を呼んだ。タイやベトナムに進出している日系工場をサポートする場所として、ラオスはにわかに注目を集めるようになってきた。今年に入ってJETRO(日本貿易振興機構)がラオス事務所を開設。日系企業は100社を数えるまでになった。

 こうした外資の流入のほか、観光業、建設業の躍進、山岳部での鉱物資源の発見などを背景に、ラオスの経済成長率は8%台で推移。アジアでもトップクラスの高水準だ。

 ラオスに進出した日系企業のいくつもが、フェスのスポンサーとなって利益を還元し、日本とラオスの交流を支える。また経済力をつけたラオス人が日本に留学したり、遊びに来るようにもなった。新しい形で両国の関係が深まっていく。

 一方的な支援の対象だった国が、経済や友好のパートナーとして変わりつつある。そんな時代を象徴するようなフェスティバルだった。