さわれる検索
さわれる検索

 設計データから立体造形物を生成する「3Dプリンタ」。主に製造現場で試作品や模型づくりに使用され高価な機器であったが、近年、価格帯の低い個人仕様タイプが発売されたことによって、より一般的な用途への活用も模索され始めている。

 「点字の日」の11月1日、護国寺にある筑波大学付属視覚特別支援学校では、ヤフー(東京都港区)が同社の強みである“検索”と3Dプリンタを連携させた「さわれる検索」プロジェクトの活動報告と今後の展開についての発表を行った。

 「さわれる検索」とは、文字・音声入力によって検索したインターネット上の情報を「見る」「聞く」ことから、情報を「触る」ことに発展させたモデル。3Dデータベースと3Dプリンタを融合させ、音声入力によって認識されたキーワードを3Dプリンタから出力し立体物にすることで、検索したものに実際に触ることができる。「触る」ことを通じて「形」を認識する視覚障害を持つ同校の児童たちに、10月31日まで「さわれる検索」を利用してもらうプロジェクトを行った。

 生徒たちは、「電車」「サソリ」「ワニ」「クラゲ」「自由の女神」など90点以上もの「触れる検索」を体験。自分が知っているものを出力して形を再確認したり、名前は知っているが形のイメージがはっきりしないものを出力したり、実際に触ることで自己の認識を補完するなど、それぞれが自由に学んだという。児童会長の福原立春香さんは
「いろいろなものを作りたいという気持ちが皆強く、装置がある副校長室は大繁盛だった。『蚊』を作ってみたら、細い足や針の様子がよく分かって驚いた」
と感想を述べた。

 同社は、さらに「さわれる検索」のコンセプトモデルの対企業的活用として、映画の告知プロモーションと連動して主人公のフィギュアを配布したり、新車の3Dデータを公開して360度余すことなく見られるようにしたりするなど、新しい広告表現の可能性を提案。既に各社からの問い合わせも多数寄せられているという。

 今後の展開としては、当プロジェクトで作成した3Dデータとアプリケーションをオープン化することが決定。11月中旬以降、3DデータはMakerBot社が運営する世界最大級のコミュニティーサイト「Thingiverse」と連携される予定で、12月上旬以降にアプリケーションがソースコード共有サイト「GitHub」で無料公開される予定だ。

 PCと3Dプリンタさえあれば誰でも「さわれる検索」が使用可能になる環境が整った。今後は、同サービスを実生活のなかで利用する消費者発の活用法に注目が集まっている。

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