2012年版「自殺対策白書」によれば、2011年の日本の自殺者数は3万651人で、14年連続で3万人を超える状態が続いている。そして20代、30代の死因トップは「自殺」であり、未来への展望を見失っている若者たちは現代社会に疲れを感じているようだ。

 そんな若者たちは、普段どんなことを望んでいるのだろうか? 書籍『若者のホンネ』の著者の香山リカさんによれば、「ペットになりたい」という若者が増えているのだという。香山さんは立教大学の教授でもあるが、毎年大学で最初の授業をするとき、自己紹介のがわりに「いま何にでもなれるとしたら、何になりたい」という話を学生にしてもらうことにしている。“憧れの誰か”といった名前も当然出てくるが、ここ数年の不動の1位は「ネコ」で、イヌも結構な上位に食い込んでくるのだという。その理由は「生活の心配もないのが何よりもうらやましい」、「どこにも行かずにゴロゴロしていられる」といった若者らしからぬ答え。SNSでの人付き合いでさえ疲れるということが話題になったのも記憶に新しいが、自由気ままなペットになりたいという主張もわからなくはない。だが、香山さんはこの状況を受けて次のように指摘する。

「ペットのイヌやネコには当然のことながら、大きな制限もある。まず、『自分では大きなことは何ごとも決められない』ということだ。たとえば、もっと自然豊かなところに住みたいと思っても、飼い主の事情に合わせて都会のマンションで一生を送らなければならないこともある。いや、今晩の食べ物ひとつとっても好みを主張することはできず、飼い主が出してくれるものを黙って食べるしかない。」

こうした話をいくら聞かせても、「やっぱりネコの方がいい」という学生は多いらしく、日々の生活のなかで悩みや不安を抱えて生きていくなら、むしろ何も考えずに暮らしていきたいという若者が多えているようだ。