「仕事時間の4割が人を動かすことに使われている」。そう聞くとコミュニケーションが苦手な人はため息が出るかもしれません。でもそんな人でも「しくみ」をつかえば他人を動かすことはできる。そう話すのが『「口ベタ」でもなぜか伝わる 東大話し方』の著者、高橋浩一さんです。
本連載では著者の高橋さんが伝え方に関するみなさんの「具体的な悩み」に回答。すぐに役立ち、一生使える方法を紹介します。

[質問]
 ある人の準備不足が原因で、チーム内の他のメンバーに負担が生じてしまっています。こうした場合、本人にはストレートに伝えた方がいいのでしょうか?

 
[回答]
「能力が足りない」ことを相手に思い知らせようとすると、相手は身構え防御反応が出てしまいます。

 他人から否定されることは、人間にとって大きな「危機」。

 だから本能的に「避けたい」と感じるその気持ちが、自己防衛的な行動につながってしまうのです。

 そこでこうした場合は、攻撃的なニュアンスを含む伝え方を避けることが重要です。

やるべきことはなにか?


 あなたがやるべきことは「相手に能力不足を思い知らせること」でも「能力不足をストレートに言って角を立てること」でもありません。

 ここであなたがやるべきことは、まわりに負担が生じないよう、その人に「きちんと準備してもらうこと」でしょう。

 そうであるなら次のように伝えることで、行動を変えてもらうのがおすすめです。

できる人の伝え方3選
 今回のケースでは次のように伝えると、関係性をこじらせず行動変化をうながしやすくなります。

(1)「いつもありがとうございます。●●さんのご負担があとで増えないよう、○○の準備をあらかじめ予定に入れていただくことは可能でしょうか?」

(2)「一つご相談なのですが、●●さんと一緒にプロジェクトを成功させたいので、期日に間に合うよう、○○の準備をすすめていただくことは可能でしょうか?」

(3)「もし難しかったら率直に言ってくださいね。今回のプロジェクトは役員が●●さんの進捗をチェックしていますので、期日に間に合うよう○○の準備をいただくことは可能でしょうか?」

相手によって言い方を変える


 相手に動いてもらいたいと思うなら、相手に刺さりやすいツボを押さえつつ、その人が納得しやすい理由を作って動かすことが大切です。

 たとえば先のケースでは、それぞれ以下を理由に相手を動かそうとしています。

(1)「あとで負担が増えないように」という「メリット」で相手を動かす
(2)「一緒に成功させましょう」という「一体感」で相手を動かす
(3)「役員がチェックをしている」という「(偉い人の)権威」を使って相手を動かす

人が動く理由は1つじゃない

 人は理由があれば動きます。

 でもその理由は全員同じではありません。

 ある人は「メリット」で動くかもしれませんし、ある人は「一体感」で動いてくれるかもしれません。

 ですから相手に動いてもらおうと思うなら、相手のタイプを見極めつつ、人によって伝え方を変えることが重要です。

相手に思い知らせても意味はない


「相手がやるべきことなのに、こちらが気を使って言い回しまで考えてお願いするなんて理不尽!」「相手にダメなところを思い知らせてやりたい!」そう感じる気持ちがあったとしても、相手に動いてもらうという「結果」を手に入れたいと思うなら、相手に寄り添った話し方をするのが得策です。

 雑に言っても他人を動かせる人はいいですが、僕のような口ベタをはじめそうではない人たちは、相手に合わせた丁寧な言い方をしたほうが楽に相手を動かせる。

 ここは合理的に考えるのが「できる人」のやり方です。