何万回も撃つことで気付いた
ボトルキャップの奥深さ
タカラトミーがボトルマンの開発を始めたのは17年頃。きっかけは、SNSでの「ボトルキャップを飛ばす動画」の流行だった。
「当時、指でボトルキャップを飛ばして野球をする動画などが拡散されていました。ですが、指で遠くに飛ばすには技術が必要で、すぐにはまねできません。そこで、子どもたちにも簡単にキャップを飛ばす爽快感を味わってほしいと考え、商品開発がスタートしました」(高坂氏、以下同)
ところが、いざ開発を始めると、ロボットの内部でボトルキャップが詰まる、射出時に引っ掛かるなどの課題が続出した。
スムーズに発射できる機構の完成に向け、高坂氏らのチームは「何万回もボトルキャップを撃ちながら微調整を繰り返す」という地道な作業を余儀なくされた。
そして、このボトルキャップを撃ち続ける“研究”は、高坂氏らに意外な成果をもたらした。
一口にボトルキャップといっても、「炭酸飲料のふたは硬く、水(ミネラルウオーター)のふたは柔らかい」といったように、飲料の特徴によって性質が異なることを発見したのだ。
ふたの特性に応じて遊び方を変えられる――。高坂氏らは、ボトルキャップの奥深さにすっかり魅了された。
いわば、中身を飲み終われば捨てられてしまう「ごみ」にすぎなかったボトルキャップが、子どもたちにとっての宝物になると気付いたのだ。
こうした研究を重ねてたどり着いたのが、ボトルマンを「パワータイプ」「スピードタイプ」「コントロールタイプ」の3種類に分けるというアイデアだった。
ボトルキャップを強く飛ばせるパワータイプは、炭酸飲料のふたを使うと威力がさらにアップする。複数のキャップを連射できるスピードタイプは、軽くて柔らかい水のふたが向いている。
コントロールタイプはバレル(いわゆる「銃身」)が長く、ボトルキャップがまっすぐ飛びやすいので、的を正確に狙えるのが強みだ。
タイプ分けなどの工夫を凝らすことで、「違うタイプの機体を試したい」「いろんな飲み物のキャップを集めたい」といった収集欲をくすぐる効果も見込んだ。
一連の仕組みだけでなく、デザインを決める作業にも時間をかけた。
「ロボットだけでなく、人間など大小さまざまなモチーフを数十案作成し、子どもたちに見せるテストを繰り返しました。その結果、ロボット型が最も愛着を持ってもらえるという結論に至りました。『ビーダマン』に似せたわけではありませんよ」