一方、たばこに含まれるもうひとつの重要成分、ニコチンの作用はどうか。
脳の報酬系と呼ばれる「快感の神経」にニコチンの受容体はある。だからニコチンを摂取するとリラックスし気持ちが良くなる。
さらに厚生労働省の健康情報サイト「eヘルスネット」によると、ニコチンには「強い血管収縮作用があるため毛細血管を収縮させ血圧を上昇」させる。たばこを吸うとクラッとするのは、血管が収縮して貧血になるためだ。
通常、人は緊張すれば集中力が増し、集中力を高めた結果、血管が収縮する。
しかし、たばこの場合、ニコチンにより血管が収縮することで、集中力を司る神経が刺激され、脳が集中状態に入る。
こうして、たばこはリラックスと集中を同時にもたらすことになる。
ところで、今回の新型コロナにおいて、喫煙者が感染すると重篤化しやすいとの指摘があるが、実際はどうなのか。
統計データによって評価はまちまちで、いまだ結論は出ていない。
細胞表面にある新型コロナの受容体ACE2をたばこが活性化させるため重篤化するという説もあるが、あくまで仮説である。
ただし、新型コロナが肺炎を引き起こす以上、喫煙により肺や気道が炎症を起こしていれば、その症状が悪化することはあり得るだろう。
面白いのはフランスの医療チームが発表した研究だ。
パリのピティエ・サルペトリエール病院の研究班が行った調査によると、フランスの喫煙者は人口の35%に及ぶが、新型コロナ感染者の喫煙率はわずか5%だったというのだ。
先述の「ニコチンが受容体ACE2を不活性化させる」という仮説と真逆の結論である。