●記録的不漁で外食業界も苦慮 大戸屋は生さんま定食を発売中止

 記録的なサンマの不漁によって、外食業界にも大きな影響が出始めている。

 定食チェーンの大戸屋では、毎年その年に根室沖で採れる新鮮なサンマを店舗で仕上げた「生さんまの炭火焼き定食」の発売が中止になった。「発売ができていない現状は残念だが、今後の目途が立ち次第発売を検討する」(大戸屋広報)と9月以降の回復に望みをかける。

 一方で、例年通りサンマを提供できている外食産業もある。牛丼チェーンの吉野家では「さんま炭火焼き牛定食」を、回転ずしチェーンのかっぱ寿司でも「北海道産 生さんま」を通常通り発売している。

 明暗を分けたのは、昨年のうちにサンマを確保できたかどうかだ。

●外食では冷凍品でも呼称してOK 「生さんま」という表記に注意

 さてここで、「昨年のサンマなのに生?」という疑問を抱いた読者もいるかもしれない。実は外食産業での「生さんま」という表記には注意が必要なのだ。

 スーパーなどの量販店に行くと、「解凍さんま」という表記を見ることができる。こうした表記は、食品表示法に基づき定められた食品表示基準に基づいている。

 ところが、食品表示基準が適用されるのは小売店で、実は外食業界はこの基準の適用外となっている。そのため冷凍品であっても、加熱処理や塩漬けをしていなければ「生さんま」と名乗れるのだ。

 実際に「生さんま」表記を使うかっぱ寿司は、「炙りさんまと対比させるために、生さんまという表現を使っている」(同社担当者)と説明する。

 史上まれにみる不漁の中でも、お手頃にサンマを提供できている外食業者は、昨年もしくはそれ以前に水揚げされ、冷凍庫でしばらく眠っていたサンマを使っているケースがほとんどだ。

 同じく、「新サンマ」という言葉についても、消費者庁によれば「『新』という言葉に明確な基準はない」という。

「生サンマ」や「新サンマ」という表記は今年採れたばかりのサンマを連想するが、外食産業に限っては実態がそうでないケースも多く、冷凍サンマが多く出回っている。

 9月以降のサンマの漁獲量も例年と比べて低調で、価格は高止まりすることが予想されている。「今年取れたサンマ」がお手頃に食べられる日は来るのだろうか。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)