なぜ柔軟剤は被害者を苦しめるのか。それは柔軟剤の成分を見れば理解できる。

 花王の柔軟剤「フレア フレグランス」を例にとると、有効成分は(1)エステル型ジアルキルアンモニウム塩だ。このほか(2)ポリオキシエチレンアルキルエーテルや(3)香料が含まれている。

 このうち、(1)は「陽イオン型」の界面活性剤で、洗剤などに使われる「陰イオン型」の界面活性剤より皮膚などへの刺激性・毒性がはるかに強い。

 (1)は別の分類では「第4級アンモニウム化合物」の1つだ。この化合物は生物の細胞膜を不安定にして細胞を殺す作用を持ち、殺菌剤などに使われているが、人の細胞にも同じく作用し、アレルギー・皮膚炎・角膜障害などの原因になる。

 また(2)は、「人の健康を損なうか、動植物の生育に支障を及ぼすおそれのある物質」と政府が判断し、監視している462物質の1つだ。

 これらはPRTR法(化学物質排出把握管理促進法)の「第一種指定化学物質」と呼ばれる。

 (3)の「香料」は、3000以上もある成分(物質)からメーカーが複数(数種~数十種)を選んでブレンドした調合香料である(個々の物質名は明らかにされていない)。

 香料成分の中には、アレルギーやぜんそくの原因になる成分、ホルモンかく乱作用や発がん性を持つ成分などがあることが明らかになっている。

「ガッテン!」が教えたワザを使った衣類が増えれば、どうなるか。

 まず、着用した人が、繊維にくっついた上記の成分の作用で肌荒れを起こす可能性がある。

 柔軟剤が肌に悪いのは、番組に出たアナウンサーが手袋をつけて柔軟剤を扱っていたことからも明らかだ。

 それ以上に心配なのは、成分が気化して周囲に放散されることだ。これを化学物質に敏感な人たちが吸い込めば、ぜんそくや化学物質過敏症を発症したり、悪化させたりする。

 番組では「皮膚への影響や柔軟剤の香りが気になる方」向けに「もう一度洗濯する」「無香料の柔軟剤を検討する」などの注意が流されていたが、これは「香害被害者」にとってほとんど意味がない。

 被害者たちは他人が使う柔軟剤で健康被害を受けているからだ。

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NHKは「使い過ぎは注意喚起した」