景気と購入価格帯の関係については、1980年代後半から90年代初めのバブル期のデータがないため、定かなことは言えないが、低価格化を推し進めきた大きな要因の一つに、新たなコンセプトの商品の登場がある。その代表が2008年にユニクロが発売した「ブラトップ」。ブラトップとはキャミソールやタンクトップの内側にブラジャーの機能がついたもので、従来のブラジャーのようにバストの形を整えるためのワイヤーは入っておらず、着心地が「楽」だという(男の私には確かめようがないが)。中心価格帯はまさに1000円~2000円である。

 下着はファッションの盛衰とも深くかかわっている。バブル期以来の大きな流れを、簡略化して振り返れば、次のようになる。

 バブル期は体のラインがはっきり出るボディコン(ボディコンシャス)な服が流行った。このためブラジャーもバストの谷間を強調したり、形をきれいに大きく見せる機能が重視された。その後、バブルが崩壊し失われた20年の間にゆったりとした服が主流になり、バストの形をあまり気にしなくてもよくなる。2000年代に入ると「癒し系」がブームになり、つれて「ナチュラル」や「楽」というコンセプトの商品が支持されるようになる。

 変化の兆しが見えたのが、12年に安倍政権が誕生しアベノミクスをぶち上げて、日本の景気も上向くのではという期待が高まった頃。ファッションや下着でもバブル的なものが復活するのではという期待が高まった。体のラインを強調するようなファッションも出たという、だが、これまでのところ「期待は幻想に終わっています」(今井さん)。

 下着のトレンドを見る限り大きな変化は見られず、ポジティブさアグレッシブさを感じさせる傾向は出ていない。その点ではアベノミクスはいまだ成果をあげすといったところだ。男性用と違い、女性の下着はバリエーションが多い分、奥が深い。

 ちなみに、調査時点は11年とやや古いが、クリスマスに女性が着たい、男性が着てほしい下着の色は、女性が赤、ピンク、黒の順、男性が赤、黒、ピンクの順だった。