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第29回 「手を使う文化」も次世代に受け継いでいく『ただしいもちかたの絵本』

文・加賀見徹

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編・著 WILLこども知育研究所(ウィルこどもちいくけんきゅうじょ)/幼児・児童向けの知育教材・書籍の企画・開発・編集を行う。2002年よりアフガニスタン難民の教育支援活動に参加、2011年3月11日の東日本大震災後は、被災保育所の支援活動を継続的に行っている。主な編著に『おもいやりの絵本』『恐怖! おばけやしきめいろブック』シリーズ、『やさしくわかるびょうきのえほん』シリーズ、『ことばって、おもしろいな「ものの名まえ」絵じてん』シリーズ(いずれも金の星社)、『レインボーことば絵じてん』、『絵で見てわかる はじめての古典』シリーズ(共に学研プラス)などがある。左:西野 泉(チーフ・エディター)、右:片岡 弘子(代表取締役)

編・著 WILLこども知育研究所(ウィルこどもちいくけんきゅうじょ)/幼児・児童向けの知育教材・書籍の企画・開発・編集を行う。2002年よりアフガニスタン難民の教育支援活動に参加、2011年3月11日の東日本大震災後は、被災保育所の支援活動を継続的に行っている。主な編著に『おもいやりの絵本』『恐怖! おばけやしきめいろブック』シリーズ、『やさしくわかるびょうきのえほん』シリーズ、『ことばって、おもしろいな「ものの名まえ」絵じてん』シリーズ(いずれも金の星社)、『レインボーことば絵じてん』、『絵で見てわかる はじめての古典』シリーズ(共に学研プラス)などがある。左:西野 泉(チーフ・エディター)、右:片岡 弘子(代表取締役)

絵 すみもと ななみ/イラストレーター。日本児童出版美術家連盟会員。広告会社でグラフィックデザイナーとして勤務後、デザイン&イラストレーション事務所「スパイス」を設立。生活関連の書籍・雑誌を中心にイラストを制作。『おてつだいの絵本』『おもいやりの絵本』(共に金の星社)、『スルスルスルリン ウンチをだすぞ』(少年写真新聞社)ほか多くの書籍にイラストを提供する

絵 すみもと ななみ/イラストレーター。日本児童出版美術家連盟会員。広告会社でグラフィックデザイナーとして勤務後、デザイン&イラストレーション事務所「スパイス」を設立。生活関連の書籍・雑誌を中心にイラストを制作。『おてつだいの絵本』『おもいやりの絵本』(共に金の星社)、『スルスルスルリン ウンチをだすぞ』(少年写真新聞社)ほか多くの書籍にイラストを提供する

ただしいもちかたの絵本

WILLこども知育研究所
定価:1,620円(税込)

978-4323073736

amazonamazon.co.jp

 一生、役に立つ! 子どものうちに身につければ、大人になっても苦労しない『ただしいもちかたの絵本』が金の星社から2016年9月に刊行され、話題になっている。子どもに身近なものの持ち方を、わかりやすい絵と文で紹介し、親子で楽しく実践することができる。

 この絵本では「しょくじ・りょうり」「あそび・まなび」「くらし」の三つのテーマに分類し、おはし、おわん、えんぴつ、えふで、はブラシ、ぞうきんなど29項目が掲載されている。<1>幼児・児童が見てすぐに真似できる、わかりやすいイラストと解説 <2>間違った持ち方の例を見て、自分の持ち方を確認できる <3>実践につながる遊びや工作なども紹介、がポイントだ。

 「持つという観点で、日常生活の身の回りにある様々なものを集めてみました。それらのものには『正しい持ち方』があることがわかります」というWILLこども知育研究所の片岡弘子代表取締役、編集を担当した西野泉チーフ・エディターに話を聞いた。

幼少期にきちんと学ぶ

 子どもは成長とともに、使うものが増えていく。それらを上手に使えるようにするためには、なるべく早い時期に正しい持ち方を覚えることが大切だという。我々大人も、日本人として箸や鉛筆などを正しく持つことができるのか、危ういところもあるのではないか。食事の席などで変わった箸の持ち方をする大人がいた場合、気になりながらもその人に正しい持ち方を教えることはないであろう。逆に、正しく美しい持ち方をしていると、見ていて気持ちよく、素敵な人だと感じるものだ。

 自由に伸び伸びとした教育を支持する、という家庭が多いかもしれない。しかし、幼少期にきちんと学んだかどうかが後々にも大事なのだ。ただし、食事中に注意ばかりしていると、言った方も言われた方もせっかくの料理の味が半減してしまうので、絵本を通して楽しみながら自然に覚えたい。きっと本人が大人になってから、身につけたことをありがたいと思えるようなときがあるのではないだろうか。

手を使うことの大切さ

 この絵本は発売されてからまだ1年経っていないが、第4刷1万4000部の発行になる。一般の家庭はもちろん、保育園や幼稚園、小学校、図書館、特別支援の先生方などからも評価されているという。ある幼稚園の保育参観でのできごとだ。昼食の時間に食べものや飲みものをこぼした園児たちがいた。すると、先生ではなく、自分たちで教室の手洗い場から台ふきんを持ってきて机の上を拭き、水道で洗って元の場所に戻したのだ。自宅では台ふきんではなく、ティッシュペーパーやウエットティッシュを使う家庭が多いので、その姿を見て感激した保護者たちがいたのだという。

 このように、普段は家庭で保護者でもあまりしないようなことを、幼児はこの絵本から学んでいる。子どもだけでなく、実際に大人も一緒にやってみると、それぞれの指の役割分担もあり、いかに手が複雑な動きをしているかということがわかる。意識をして改めて実践すると、新たな発見もあるのではないだろうか。

 持ち方に“点数”は付かない。しかし、正しく持つことは、ものを大切に、丁寧に扱うことにもなる。文化の伝承をしていきたいという思いもまた、この絵本にはあるのだ。手を使うことの大切さと、途絶えさせたくないこと。子どもたちの可能性を広げ「手を使う文化」も次世代に受け継いでいくのだ。(朝日新聞社 朝日新聞デジタル&編集部 副編集長 加賀見 徹)

 しっかり もてれば
 ただしく もてれば
 きれいな じが かける!
 おいしく たべられる!
 じょうずに つくれる!

『sesame』2017年9月号(2017年8月7日発売)より
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=19267



(更新 2017/8/ 9 )


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プロフィール

加賀見徹(かがみ・とおる)

 東京都生まれ。朝日新聞社 デジタル本部『朝日新聞デジタル &』編集部所属。監修・著書に『スタイリストになるための練習問題100』(雷鳥社)がある。2012年より『sesame』(朝日新聞出版)で「親子で読みたい本」を連載中。人・物愛好家。幼児教育研究中