第14回 井清織物のイノウエ夫妻 |AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

第14回 井清織物のイノウエ夫妻

文・鈴木正晴

プロフィール  バックナンバー

このエントリーをはてなブックマークに追加
左からお二人がイノウエ夫妻。右は筆者

左からお二人がイノウエ夫妻。右は筆者

鈴木さんおすすめ OLNの新作ストール windmillご購入はこちらから

鈴木さんおすすめ OLNの新作ストール windmill
ご購入はこちらから

巻き方によって様々な表情を見せてくれます

巻き方によって様々な表情を見せてくれます

みんなで考えたパッケージ

みんなで考えたパッケージ

 作り手、使い手、そして売り手の出会いの場、日本百貨店。今回は売り手、つまり我々スタッフとの接点を非常に上手に「活用」されている作り手さんをご紹介したいと思います。

 桐生で着物の帯を織り続けている老舗、井清(いのきよ)織物。こちらのイノウエ夫妻との出会いは、東京・お台場での展示会でした。コワモテというか芸術家肌というか、なんだか怖い目をした旦那さんと、にこにこ優しそうな奥さまの組み合わせ。自然と奥さんとの会話が弾みます。その会話の中にちょいちょい挟み込んでくるイノウエ旦那のこだわりの一言。いつしか場は盛り上がり、最初はクールに見えた芸術家も、暑苦しく自分の思いを語ってくれました。こりゃ物づくりの現場に行くしかないと思い、さっそく工場を訪問しました。

 昔ほど着物が売れない時代。でも帯を織る技術の継承はしていきたい。そこでイノウエ夫妻は「OLN(オルン)」という新しい生活雑貨ブランドを立ち上げ、今の生活様式に合った商材を開発しています。店頭でも使い手の評価が高い商品です。

 このイノウエ夫妻、ことあるごとにお店に来てくださいます。ふらりと立ち寄るのではなく、いつも問題意識を持って、滞在時間が非常に長い。店頭での商品の動き、どんなお客様が興味を持たれているか、何か商品に課題はないか。売り手である我々スタッフを捕まえてはいろんなことを聞き出します。イノウエさんたちが上手なのは、接客の邪魔にならないように上手に配慮しながら、隙を見てコンタクトをしてくること。お客さんが混んでくると、ふっと会話を切り上げます。オモイヤリですね。そして必ず、自分たちの課題を解決するヒントを持ち帰り、少なからず反映したものを持って、また店頭に来てくれます。

「一緒にモノヅクリをする」

 そんな意識を上手に持たせてくれるからこそ、うちのスタッフも「OLN=自分たちの商品」という気持ちを少なからず持って販売しています。イノウエ夫妻、おぬしたちなかなかやるなと、いつも心で唸っています。巻き込み上手なのです。

 先日もパッケージについて「どんな感じがいいでしょうか」「パッケージって必要でしょうか、商品だけじゃだめでしょうか」と、自分たちの中にある答えはあまり表に出さず、我々に意見を求めます。

 それが早速この春の新商品でカタチになりました。帯を作るという井清織物の根っこの部分。その部分をいつまでも忘れないようにと、帯留めをモチーフにしたパッケージが出来上がりました。

 これからも作り手にどんどん「出会いの場」を活用してもらいたいですし、我々売り手もその出会いを楽しみたいと思っています。それが使い手にも伝わって、新しい意味での三方良しの関係を築いていけたらと考えています。


(更新 2015/7/ 1 )


バックナンバー

コラム一覧

続きを読む

プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)

あわせて読みたい あわせて読みたい