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ネットカフェ、2300円。

文・内藤みか

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 最近、ネットカフェで作業している。ここにいれば、洗っていないお皿や洗濯物を見てソワソワすることもなく、ただただひたすら原稿に没頭できるからだ。

 長時間ネットカフェで過ごすと、それなりに料金もかさむ。今日なんて午後4時から12時まで8時間もいたので、2300円もかかってしまった。
 その間、トイレに1回行っただけで、あとはずっと1畳ほどの狭いスペースでPCに向かっている。身体が固まってしまいそうだけれど、締切がせっぱつまっているので、しかたがないのである。

 隣の部屋の気配が感じられるが、ネットカフェならではの味わいである。匂いと音でお隣さんが何を食べていることがわかることもある。今日なんて右隣でぽりぽりと、どう考えてもお漬け物を食べているらしい音がして、私の口の中まですっぱくなるようだった。

 私は物音に少し敏感なので、うるさい時は席を替えてもらうことがある。先日は隣の男の人のイビキがうるさすぎて移動したし、以前は近くのカップルシートから楽しげな会話が聞こえてくるのが悔しくて、部屋替えをした。

 今日は少し怖い思いをした。左隣の部屋から「私は神様だ。私は神である」というつぶやきがずっと聞こえてくるのだ。正直言って、怖い。しばらくして彼は席を立った。そうっと隙間からうかがうと、マンガを棚から持って戻ってきたようだ。

「ふははは、神だ! これで神になれる!」
 いったいどんなマンガを読んでいるのかちょっと気になったけれど、彼のひとりごとがうるさくて仕事に集中できないし、なんだか不気味なので慌てて荷物を持って部屋を出て、フロントに席の移動をお願いした。その時、手に持っていたコンビニおにぎり(サケ)を、ぽろっと床に落としてしまったことが、とても心残りだった。

 深夜、帰宅すると子ども達は先に眠っていた。ごめんねと心でつぶやきながら炊飯器をのぞくと、きれいに空っぽだった。たっぷり焚いたのに食べ盛りの息子の胃におさまってしまったらしい。

 しかたなく近所のコンビニに出かけて、サケのおにぎりを買いなおした。現在午前1時。私の作業はまだまだ続く。
 ネットカフェにいた「神様」は、まだ、マンガを熱読中だろうか。


(更新 2012/2/ 9 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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