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手をつなぐのに、3000円。

文・内藤みか

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 このあいだ、真夜中にひとりで原稿を書いていて、ふとさみしくなり、誰かと手をつないで恋人みたいに歩きたい!と思ってしまった。

 時刻は明け方の4時。思い出すのは12時間ほど前に一緒にお茶をしていた25歳男子のことだった。彼ならば、肩と肩がぶつかるくらい近くに並んで歩いていたのだから、手をつなぐくらい、大したことはないと思ってくれるかもしれない。

 明け方の4時である。さすがに寝ているかもしれないと思い、メールで『まだ起きてる?』と聞くと『なんでしょう?』とすぐ返ってきた。バンザイ!起きていた!と電話をすると「今のメールで起きたんだよ」と眠そうな声。

 起こして申し訳ないと思いつつ、手をつなぎたいなどと率直に言ったらきっと断られるだろうと思ったので、私は知恵を絞った。

「あのね......、もし、女性と手をつなぐバイトがあるとしたら、時給いくらくらいならやる?」
「なにそのバイト」
「いや本当にあるのよ。出張ホストにそういう依頼が来るらしいの」
「出張ホストは手をつないだらいくらもらえるんですか?」
「新人なら時給1000円くらいかな」
「安いなあ、最低でも2000円は欲しいなあ」
 彼がそうぼやいたので、私は鋭く突っ込んだ。

「じゃあキミは時給2000円もらったら、女性と手をつなぐバイトをしてもいいのね?」
「まあそのくらいもらえればいいですね。男はなかなか高額のバイトがないんで」
「よかった!」
 心底安心して、私はこう切り出した。
「じゃあさ、次に会った時に、私と手をつなごう! 2000円払うから!」
「え、ええ~ッ!? みかさんと!? 恋人でもないのに?」
「恋人じゃないからこそお金を払うから! 私、誰かと手をつなぎたいの!」

 すると彼はなぜか、
「3000円ならいい」
 となぜか1000円値上げしてきた。私は面倒臭いので、もうそれで手を打った。3000円くれたら原宿だろうが表参道だろうがどこでも手をつないでくれるという。CD1枚の値段で恋人気分が味わえるのだから充分オトクだ。

 電話を切ったのは午前6時を回っていたが、私は願望を達成できそうで、とりあえず満足だった。さあ、今度はいつ彼と会えるかなあ。


(更新 2012/2/ 2 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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