今日も早朝、愛犬せんちゃん(写真)と散歩する。早く連れていかないとおしっこが我慢できなくなる。

 せんちゃんは散歩がうれしくて、玄関から出るときに甘えて私の足をアマガミする。かなり痛い。

 朝の散歩担当の私とせんちゃんは、朝日を浴びてゆっくりと歩く。せんちゃんはクンクンと道路の側溝の臭いを嗅いで歩くので時間がかかる。寝る前は家の中を動き回るが、次男の帰りを玄関マットに座って待つ日もある。土日の散歩担当である次男にほめられようと企んでいるのだ。

 実は、こんなに楽しい日が再び来るとは、想像だにできない時期があった。

 せんちゃんは、17年前の米同時多発テロの3日前に生を受けた雌の柴犬だ。

 今年の1月、せんちゃんは床に伏せたまま立ち上がれなくなった。それを見た夫は、「可愛がっていたが亡くなったときと同じだ。静かに逝かせてやれ」。

 その言葉にカチンときた。絶対にせんちゃんを死なせない! 動物病院に連れていくと、せんちゃんは診察台で先生を噛むそぶりを見せた。その勝ち気な性格と、先生のアドバイスでドッグフードとおやつ用の軟らかい餌を混ぜて与え始めたことが幸いした。老衰みたいなもので、食いしん坊な彼女はガツガツ食べ、元気になっていった。

 夕方の散歩担当の夫は、近所をゆっくり散歩し、「ワンちゃん、大切にされていて幸せですね」などと言われたと自慢する。

 今日も爽やかな目覚め。そしてコスモスやワレモコウ、シュウメイギクなどが風に揺れるお気に入りの散歩道をゆっくりと歩く。

「こうして朝、散歩できるのもせんちゃんのおかげ」と話しかけても、相変わらずクンクンと道の臭いを嗅ぐばかり。遠くでヤマバトの鳴き声が聞こえている。

(清水富江さん 群馬県/70歳/主婦)

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