10年前。ふと立ち寄ったペットショップで、母犬の乳をおいしそうに飲む兄弟たちにはじき出され、途方にくれていた子犬。

「トホホ」って感じでクリクリした目を僕に向けた瞬間から、その子犬はわが家の一員となることが決まったのだった。

 名前はダリ(写真、雌)。人懐っこく愛想のよい彼女は、家族はもちろん、すぐに近所中のアイドルになった。

 庭で放し飼いの彼女の定位置は、門のわき。そこに陣取り、行きかう人々を眺めている。まるで、「この町の治安は私が守りますから」とでも言っているようにも見える。

 そして、あるときは垣根越しにひとり暮らしのおばあちゃんの話し相手になり、あるときはなかなか泣きやまない赤ん坊の泣き声をみごとピタリと止めた。彼女も日々結構忙しそうなのだ。

次のページ