覚悟を決めて臨んでいる姑の自宅介護ではあるが、ストレスは半端なものではない。人格が壊れてしまいそうなほどつらいことも多い。そんなとき、携帯電話の壁紙にしている2匹のの写真(右がそら、雄、左がうみ、雌、ともに4歳の兄妹)を見る。
 実は彼らは、写真じゃなくても、私の周りにいつもいる飼い猫たちだ。
 外出にも制約がある私の生活の中で、唯一幸せを与えてくれる愛しい者たち。介護の合間のつかの間に、私の膝や背中に乗ってくる甘えん坊の2匹だ。
 猫たちの力は偉大で、その丸い背中をなでているだけで心のリセットができる。
 姑の介護の仕方を巡り、夫と意見が対立することもある。最終的には直接携わることの多い私の圧勝なのだが、なんとなく後味が悪いこともある。そんなとき、どちらかの猫の声を聞くだけで、夫婦げんかの後味の悪さが解消される。
 また、夫婦それぞれが1匹ずつ猫を抱き、首元をなでてやると、猫たちはゴロゴロとのどを鳴らす。
「子は鎹」という言葉があるが、私たち夫婦にとっては猫が鎹なのだ。
 先の見えない介護生活。そんな中、家の事情もわからないよそ様の「よくやってるわねぇ。私には絶対に無理!」という言葉に腹が立ち、「大変ねぇ、助けられることがあればいいのだけど……」と同情されるのにも腹が立つ。
 そして、「大丈夫、たいしたことないから」と、粋がって言い返す自分に一番腹が立つ。そういったもやもやした思いから心を解放してくれるのも猫たちだ。
 私は、介護に縛られていると思うのではなく、介護で家にいるからこそ可愛い猫たちのそばにいられると考えていたい。
 ありがとう、私のそばにいてくれて。

(下荢坪穣さん 岩手県/54歳/主婦)

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