以前、この欄でしまちゃん(写真)の年に似合わぬお転婆ぶりを紹介してから、もうすぐ6年。相変わらず元気で21歳を迎えたが、今度ばかりは本当に心配した。
 大雪の降った夜、しまちゃんが「おしっこに行きたい」と、にゃあ~にゃあ~と騒ぎだした。
 彼女は体調を崩していて食事も食べないし、元気がない。前日には同居している次男に早く帰宅するよう言ったほどである。その夜が危ないと思ったのだ。
 梅雨時など、外に出ていくのが面倒だと、しまちゃんは洗面所やお風呂場などの排水口にちょこんと座って用を足していた。だのにしまちゃんは、この夜に限ってどうしても外に行くと言って聞かず、とうとう出ていってしまった。
 玄関を開けて帰りを待った。だが、帰ってこない。真っ白な雪の上に、しまちゃんの足跡だけが小さく続いていた。夫が「は自分の死を悟ると家族の前から姿を消す」という言い伝えを思い出し、慌てて懐中電灯をつけ、雪の中をずぼずぼと捜しに出かけた。
 やがて夫がしっかりとしまちゃんを抱っこして、にこにこと帰ってきた。足跡をたどっていったら、裏の家の玄関で帰り道がわからなくなり、途方に暮れてボーッとしていたとのこと。
 それからのしまちゃんの快復ぶりといったら! 暖房が切れると「早く暖めて~」、キャットフードに不満があると「もっと他のがあるだろう。早くそっちを出すんだぁ!」。にゃあ~にゃあ~とジコチューでにぎやかなこと。「水よりこっちのほうがおいしいにゃん」と外で雪の塊をワイルドにぺろぺろなめる。気が向くと、次男が出勤するのを玄関でごろんとなって見送っている。
 わが家のばーちゃんしまちゃん。こわーいけど、愛すべき女神なのである。

(清水富江さん 群馬県/65歳/主婦)

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