第1046回 ハムスターのココで知る命の重み 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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第1046回 ハムスターのココで知る命の重み

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 仕事で深夜帰宅になることも多い私。寝ている家族に気を使いながら玄関ドアをそっと開けると、出迎えてくれるのはハムスターのココ(写真、2歳)だ。
 ケージの中から「出して!」と訴えている。手のひらにのせ頭をなでてやると、うっとりとした表情をみせる。たまらなく愛おしい。
 そもそも私はハムスターを飼うのには大反対だった。ネズミが家にいるなんて正直気持ちが悪かった。
 だが、「ちゃんと面倒を見る」という当時、小学4年生の娘の言葉に負けた。共働き家庭、鍵っ子の一人娘に、父親はどうしても甘い。
 やってきたのは雌のジャンガリアンハムスター。数日もしないうちにケージから脱走し、娘の足をガブリ。恐怖心から娘は飼育放棄。
 妻は「あなたが飼うのを許可したから」と、ココのケージは私の部屋に置かれることになった。夜中にココが立てるカラカラという回し車の音で睡眠妨害の日が続く。一刻も早く娘の恐怖心が去ることを祈った。
 そこにあの東日本大震災。会社から妻にメールを入れた。私の部屋は足の踏み場もないほどで、ココのケージは家具の下敷きになっているという。
「私の部屋にさえいなければ……」。あの日、日本中の誰もがつきつけられた運命の残酷さのようなものを感じた。うっとうしい存在に思えていたのに、死の重みはネズミでも同じだった。
 帰宅難民の列に交じり重い足取りで帰路につくと、妻から「ココ発見!」のメールが。とたんに胸に熱いものがこみあげてきた。
 以来、ココのケージは玄関に置いてある。家を出る時も帰った時も、家族とココが顔を合わせられるようにだ。そのことがどれだけ幸せであるかを教わった。
 今夜も遅くなった。早くココを手のひらにのせて、命の温もりを感じたい。

(高橋尚樹さん 東京都/53歳/会社員)

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(更新 2013/10/15 )


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