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第15回 入れ換わって想像してみる文・大谷由里子 |

「相手の立場になって考えなさい」
と、よく言われる。
でも、これって、けっこう難しい。
とっさになかなかできない。
だから、心に余裕がある時に、「入れ替わりの術」を使って、その人になって、自分のことを見てみる。
意外と、これ、いろんな発見がある。
人なんて思い通りになるはずがない。分かっているけれど、仲間に子供に夫についイライラしてしまう。
「わたしは、こんなに一生懸命にやっているのに……」
「なんで、わたしのことを分かってくれないの」
わたしも、しょっちゅうそう思って、悲しくなったり、投げやりになったり。
でも、心の余裕のある時に、入れ替わって楽しんでみる。
「わたしが、出張の時に、テレビばかり見てないで、ちょっとくらい部屋の掃除してくれたらいいのに」
と、夫に腹を立てていた。
そんな夫と入れ替わってみる。
「嫁もいないし、気楽やし、ふだんゆっくり観れないDVD借りて来よう!」
そんなふうに考える自分がいる。それが分かると、
「そんなに自分の都合の良いように動いてもらえるわけないか」
と、あきらめがつく。
「ちょっとは、連絡しなさいよ」
「ダラダラしてばかりいるんじゃない」
と、しょっちゅう娘たちにイライラしている。
そんな娘と入れ替わってみる。
「たまには、母親に連絡したほうがいいけど、連絡してもバタバタしているし、たまに会うと説教されるし、そっとしておこう」
「でも、お小遣いだけは欲しいなあ」
そんな娘たちの気持ちになると、彼女たちの行動も分かる。
人間、50歳を過ぎると、20代の部下やバイトとなかなか話がはずまないことだって多い。そんな彼らと入れ替わってみる。
「大谷さんに何を話せばいいんだろう」
「下手に話しても、突っ込みを入れられるだけかもしれないし……」
そんなふうに考えてしまうだろう彼らの気持ちに気づく。
(更新 2015/5/26 )

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プロフィール
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大谷由里子(おおたに・ゆりこ) 1963年奈良県生まれ。京都ノートルダム女子大学を卒業後、吉本興業に入社。故・横山やすし氏のマネージャーを務め、宮川大助・花子、若井こずえ・みどりなどを売りだし注目を集める。2003年、研修会社の志縁塾を設立。「笑い」を取り入れた「人材育成研修」は、NHKスペシャルなど多くのメディアで話題となっている。 現在は、年間300を超える講演・研修をプロデュース中。主な著書に『仕事で大事なルールは吉本興業で学んだ』(こう書房)、『はじめて講師を頼まれたら読む本』(中経出版)など多数。 |