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「喫茶店」を仕事場にする理由

文・中島かずき

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 久しぶりに、『シレンとラギ』を観てきました。
 東京初日以来です。
 前回、さんざん苦しんでいたのは『五右衛門ロックⅢ』のプロットだったのですが、新感線の事務所でも「もうだめだ」とか、制作の子に「俺が楽屋のケータリングをやるから君が台本を書くというのはどうかね」などと愚痴やら無理やらいいまくって、なんとか一日遅れで提出できました。
 今回もなんとか"物語玉"の糸の端っこを捕まえる事が出来たようです。
 でも、本当に綱渡りだったんですけどね。
 これができないと、劇場に顔を出しても怒られるので、本番を観に行くのも自主規制していたというわけです。
 
 10日ぶりに観た『シレンとラギ』は、少し演出も手を加えられていて、また精度が上がっている感じでした。
 前回のいのうえ歌舞伎の『髑髏城の七人』、通称『ワカドクロ』では、若手が中心の芝居だったので、本当に毎日驚くように芝居の見え方が変わっていき目が離せない感じだったのですが、それとは違い高め安定という気がします。
 さすがに今回はベテラン陣が多いですからね。
 安定した中で芝居を円熟させていってくれたらいいなと願います。

 そう言えば、久しぶりに宮藤官九郎くんに会いました。
 忙しい中、見に来てくれていたのです。
「NHKの朝ドラが始まるから大変でしょ」というと「かずきさんも『ライダー』、ずっと書いてるんですか?」と。
 宮藤くんの娘さんが『仮面ライダーフォーゼ』にはまっていて、彼も観てくれているらしいのです。
 もちろん僕が全部書いているわけではありません。三条陸さんや長谷川圭一さんも書かれているので、僕自身がテレビ本編だと半分弱くらいの割合でしょうか。フォーゼの映画の脚本を書いている時はテレビ本編は休んでますしね。
 それよりも朝ドラのほうが大変です。
 半年間ずっと一人で書かなきゃいけない。
「大河ドラマよりも大変だという噂も聞くよ」と宮藤くんに言うと、まだ始まってないからと何とかなるだろうという雰囲気のいつもの宮藤節でした。
 この人もかなり忙しいだろうに、いつもマイペースな雰囲気を漂わせています。
 
「どこで仕事しているの? 仕事場?」と聞くと「いやあ、喫茶店ですよ。ネットがつながらないように」
「そうそう、そうなんだよね。俺も同じで、近所の喫茶店転々としながら原稿書いてるよ」と僕もうなずきます。
 いやあ、ここにもいました。ネットが天敵の脚本家。
 宮藤くんの場合はYouTubeを見てしまうとのこと。
「ネットはやっぱり危険だよなあ」という話で盛り上がりました。 
    自分の意志の弱さを素直に認めて喫茶店で仕事をしている脚本家がいたら、どうかみなさんも温かい目で見てやって下さい。


(更新 2012/6/ 7 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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