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フリーになって考える、一日の時間の使い方

文・中島かずき

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 会社を辞めてから、もう一ヶ月近くになりますが、まだ身体が慣れません。
 今までは、昼間出勤して、夜、原稿を書いていたので、夜更かししがちで、だいたい午前5時くらいに就寝して、午前10時から11時頃に起きて出勤していました。
 会社を辞めたら、もう少し早寝早起きにしようかなと思っていたのですが、つい今までのペースで仕事をしてしまい、寝るのが5?6時くらいになってしまう。
 当然起きるのは、昼頃です。
 そうすると午後の時間が経つのが早いのですね。
 なんだかぼやぼやしてるうちに、夕食の時間になってしまう。
「おかしいなあ。会社員の時は、これだけの時間で仕事をずいぶんこなしてたんだけどなあ」と、すごした時間のゆるさに首をかしげてしまいます。

 と、同時に、「こんなにぼやぼやしてて食っていけるのか、俺」とちょっと不安になったりもする。
『ジャンヌ・ダルク』の台本が、ようやく手から離れたこともあり、今さしせまって〆切がやばい仕事がないせいもあるのでしょう。
 もちろんやらなければならないことはあるのです。
 今年中に、もう一本芝居の台本は書かなきゃならないし、それ以外にもちょっと大きな仕事が進行中です。
 ただ、この一ヶ月でどうのこうのというわけではない。
 今まで、切羽詰まっているのが日常だったせいもあり、こんなに余裕のある毎日でいいのかと、不安になるのですね。
 
 この10年くらい、自転車操業で原稿を書いていて、アウトプットばかりでインプットが足りないと感じていました。
 会社を辞めたら、今までたまっていた本を読んだりDVDを観たりする時間もできるぞと思っていたので、余裕があってもかまわないのです。
 頭では、そうわかっているのですが、身体が落ち着かない。
 夕方のニュースで、30代から40代の失業率が高く再就職もままならない。仕方がないので実家に戻り、就職活動をしながら、親の年金で暮らしているというような報道に、妙に他人事じゃなく見ている自分がいたりします。
 夕方のニュースを自宅で見ているという、今までになかったシチュエーションも含めて、焦ってしまう。
 特に会社員最後の一年は、午後から夜にかけて四、五件のミーティングなんてことも結構あったんで、時間の密度が違ったんでしょうね。
 原稿を書くというのは、一人の作業なんで、ついダラダラとやりがちで、その分、「ありゃ、あんまり進まなかったのに、もうこんな時間だよ」となってしまいます。
 ずっと家の中にいると、太ってくるし。やばいです。

 読書をするのも、原稿を書くのも、若い頃に比べれば、集中力が落ちてきたなと感じることがあります。
「さあ書くぞ」と机についてパソコン立ち上げてから、実際に原稿にとりかかるまでにダラダラする時間が必要です。ダラダラしながら、気持ちを高めて原稿に向かう。そこまでの時間が昔より長くなり、原稿書き続けて、ふっと気が抜けるまでの時間が短くなった。 これが歳というやつなんですかね。

 でも、そうとばかりも言っていられません。
 この間、野田地図番外公演『表に出ろいっ!』を観に行ってきました。
 野田秀樹さんと中村勘三郎さん、演劇界と歌舞伎界の重鎮とも言えるお二人が身体をはってスラプスティックギャグをやっていた。
 うまい人がやるドタバタは、本当に面白い。
 ここのところの野田さんの作風から考えて、ここまで振り切って笑わせる芝居になっているとは想像できなかった。
 もちろん、野田さんの作演出ですので、ただ面白おかしいだけではなく、締めるところは締めてきます。
 いやあ、先輩がこれだけ身体をはった芝居を作っていたら、こちらもまだまだ頑張らなきゃいけないと、つくづく思わされました。


(更新 2010/9/23 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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