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SFへの扉を開いてくれた筒井康隆編『SF教室』

文・中島かずき

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 筒井康隆さんと言えば、彼のブログ『偽文士日碌』を楽しみに読んでいます。
 執筆活動だけでなく、神戸と東京を行き来しながら、テレビ出演、ご自身が出演する朗読会など、まだまだ精力的に活動されている姿が伺えて、ホッとします。
 一昨年、初めてライトノベルを執筆した際に、イラストのいとうのいぢさんと一緒にサイン会を行った時の日記など、暴漢が襲ってきたらどうする、自分がいとうのいぢを守れと言うのかと心配が暴走する描写など、往年の筒井節が健在で、嬉しくなってしまいました。

 前回、書き損なってしまったのですが、小学校高学年はむしろミステリに傾倒していました。背伸びして自分の小遣いで初めて文庫を買ったのも、この頃です。創元推理文庫の『アクロイド殺害事件』だったかな。文庫と言えば古典がメインで、大人のものだというイメージが強かったので、自分自身「こういう本も読めるようになったのだ」となんとなく誇らしかったような記憶があります。同じ創元推理文庫の『世界短編傑作集』全五巻なんか夢中で読んだな。さすがは江戸川乱歩編、「奇妙な味の短編」の面白さもこのシリーズで知りました。
 
 それがSFに転ぶきっかけになったのは、中学の図書館で見つけた『SF教室』という本です。
 この本の編者が筒井さんでした。
 SFとは何かから始まり、海外の名作の紹介、日本のSF作家とその代表作、SFマンガや映像作品、そして「時間」や「超能力」など基本になるアイディアの紹介と、小中学生向けの入門書としては抜群の出来でした。筒井さんの他に、海外作品の紹介を伊藤典夫氏、マンガや映像作品等に関しては豊田有恒氏と、そうそうたるメンバーが、子供相手に本気で書いているのですから、今思えば面白いのも当然です。
 よい本読みが紹介した本は、とても読みたくなります。
 試しに気になったものを二、三冊読んでみると、これが面白い。
 ミステリが「謎の解明」という、収束に向かう"閉じたエンタテインメント"なら、SFは、アイディアがどんどん広がっていくのが快感な"開いたエンタテインメント"だ、なんて思ったりもしました。
 それから一年たたないうちに『SFマガジン』に手を出すようになるのですから、あのくらいの年齢の成長というのは、早いものですね。

 最近----筒井さんのブログを読み始めた頃から、この『SF教室』のことを思い出して、なんとか読めないものかと、古本屋を探してました。
 昔ほど時間がとれないので、ネット古書店が中心でしたが、なかなか見つからない。
 図書館検索で、都内の図書館で数カ所蔵書はあったので、読もうと思えば読めるのですが、こうなると手元に置きたい。
 もう駄目かなとあきらめかけた頃、ヤフオクで見つけて、ようやく入手することができました。
 嬉しくて、じっくり読もうと思い、まだ手つかずにしているのですが、こうやって子供の頃の記憶をもう一度手にする行為が増えた気がします。
 昔に比べれば、随分楽にいろんな物が手にはいるようになりましたしね。
 自分の欲しい本が、パソコンのクリックひとつで買える時代です。
 iPadなどの普及で電子書籍が一般化すれば、こういう昔の本の復刻も今よりはずっと楽になるでしょう。
 あんな板一枚に、膨大な書籍のデータが入っている。
 中学時代の僕が見たら、驚くでしょうねえ。
 本当にSFの世界だと思ってしまうかもしれません。

 でも、こんな状況が進めば、今の若い人達が僕くらいの年齢になったときに、昔を懐かしんで、若い頃に好きだった本を一生懸命探して手に入れる喜びというのはなくなるかもしれません。
 もっとも、その頃にはその頃で、古いデータを探して回ったりするのかもしれませんね。「俺がガキの時に見たYouTubeのMADアニメがどうしても見てえ」とか言って。
 


(更新 2010/7/ 1 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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