これからのヒットは特化型?! 優里「ドライフラワー」の大躍進
これからのヒットは特化型?! 優里「ドライフラワー」の大躍進

 11月23日付のHot 100で注目したいのは、16位にランクインした優里の新曲「ドライフラワー」(【表1】)。優里は昨年の12月に「かくれんぼ」という楽曲でデビューし、主にストリーミングサービスで話題を呼んでいるシンガーソングライターだ。誰もが共感できるラブソングをエモーショナル歌うのが特徴で、昨今のヒット曲のトレンドであるシンプルなサウンドとインパクトのある歌は、瑛人やTani Yuukiにも通じるものがある。

 ただ驚くべきなのが、「ドライフラワー」のチャートアクションの勢いだ。この曲がiTunesで先行配信されたのが10月18日。その時点の集計である11/2付では圏外、ダウンロードのポイントも94位止まりと地味だったが、10月25日からストリーミングが始まると、ダウンロードが79位、ストリーミングが81位、総合で93位とじわじわ上昇。続いて10月31日にMVがYouTubeで公開された後の先週11/16付では動画再生数が一気に30位、ストリーミングが35位、ダウンロードが71位、総合で39位と急激に右肩上がりとなった。そして今週は、ストリーミングが9位、動画再生数が18位、ダウンロードが39位という見事な結果となっている。

 ここで注目すべきなのは、やはり動画再生数とストリーミングの動きだ。まず動画に関しては、オフィシャルのMV公開前日の10月30日にTHE FIRST TAKEに登場している。THE FIRST TAKEは、アーティストがスタジオで一発録りを披露する人気のYouTubeチャンネルで、DISH//「」の大ヒットのきっかけを作ったことでも知られている。ここに早々に登場したというのは非常に大きい。また、数あるストリーミングサービスの中でも、LINE MUSICには力を入れて施策を組んでおり、実際LINE MUSIC内のチャートでは3つのチャートで首位を獲得している。これは彼の音楽を聴くリスナーの傾向をしっかりと把握できているからこその施策であり、その効果を発揮したからこそ結果につながっているのだ。

 このチャートの動きを見ると、やはり何かに特化するというのは今の時代は非常に重要なのがわかる。ストリーミングでもYouTubeでもTikTokでも、プロモーションをある一定の場所に集中させることで一気にブレイクの突破口ができる可能性は高い。まだテレビの露出も少なく、ライヴでの大舞台も未経験だとしても、それらはヒットしてからの後付けで構わない。まずはきっかけを作り、そこに特化するとヒットにつながっていくという図式を、優里のチャートアクションから読み取ることができるのだ。Text:栗本斉

◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。