クリープハイプ新曲「愛す」、AC部とコラボした“謎過ぎる”MVとの関係を考察
クリープハイプ新曲「愛す」、AC部とコラボした“謎過ぎる”MVとの関係を考察

 12月11日、配信がスタートしたクリープハイプの新曲「愛す」(読み:ブス)。そして、そのミュージックビデオ(MV)が、同日YouTubeにてプレミア公開され、その謎過ぎる内容と合わせてファンを中心に話題となっている。

 すでに「愛す」のYouTubeのコメント欄には、多くのリスナーの謎解きが並ぶ。MVの登場人物〈ビュオザ・ワルド〉が〈View Of The World〉、つまり〈(尾崎)世界観〉にかかっていることなどは分かりやすいが、MV中には暗号めいたキャラクターや固有名詞も多く、思わず謎解きに参加したくなる内容になっている。

 その問題のMVの内容は、楽曲の歌詞と部分的にリンクしてはいるものの、全体的な物語としては全く異なる、壮大なSFモノに仕上がっている。(楽曲自体は、どちらかと言うと男女の別れのシチュエーションを思わせる。)自然に考えれば、楽曲が先にあり、MVが後に作られた、という順序だろうから、このMV自体、バンドから歌詞を託されたAC部が、その言葉を用いながら描き出したパラレルワールドなのではないか。そんな印象を抱いた。もちろん、パラレルワールドにしても、本当に全くブッ飛んだ世界観ではあるのだが……。

 とは言え、両者の物語には、共通する本質がある。それは〈素直になれない〉とこと。それによって〈すれ違ってしまう〉こと。あるいはMVでも印象的に演出されている〈(結果としての)ねじれてしまう〉ということ。そう、〈ねじれ〉という点で言えば、「愛す」という一見するとポジティブな字面と、歌詞の世界が描き出す別れの空気が濃厚な物語にもまた、ねじれを感じる。あるいは、そうした物語が、ホーン隊を敷き詰めた極めてゴージャスでポップなアレンジの中で歌われていることも、そうだ。

 そうやって歌詞/サウンド/MVの間を行ったり来たりしながら、メタ的な視点からの意味付けを行っていくことで、「愛す」という楽曲の体験は、通常の音楽を聴く体験からは一線を画すものになっていく。その意味で、ある種のマルチメディア・アートとしての狙いを明確に持った作品なのではないだろうか。

 それともう一つ。その体験が、謎めいていて、ブッ飛んではいるものの、曲調とAC部のMVのおかげで、ポップで楽しげなものになっていることは、改めて強調しておきたい。その印象ゆえに、「現メンバーでの活動10周年」というテーマを掲げているバンド自身にとっても、リスナーにとっても、「愛す」はとても幸福な“祭り”になっているように思えるのだ。(Text:遊佐等等)

◎クリープハイプ - 「愛す」 (MUSIC VIDEO)
https://bit.ly/2MdoWmt

◎リリース概要
シングル『愛す』
2020/1/22 RELEASE(配信はスタート)
〈初回限定盤 (CD+DVD)〉
UMCK-7052 2,300円(tax out.)
〈通常盤 (CD)〉
UMCK-5688 1,000円(tax out.)