【インタビュー】アヴリル・ラヴィーン、闘病後初のツアーやビリー・アイリッシュとの共通点を語る
【インタビュー】アヴリル・ラヴィーン、闘病後初のツアーやビリー・アイリッシュとの共通点を語る

 アヴリル・ラヴィーンが米ビルボードとのインタビューに応じ、2019年9月半ばからキックオフした約5年ぶりのツアーに込めた思いや、後輩ミュージシャンから尊敬される立場になった現在の心境などについて語った。

 米国だけで累計1,250万枚のアルバムを売り上げている彼女は、5年前に【アヴリル・ラヴィーン・ツアー】を日本で終了して以来表舞台から姿を消し、ライム病の治療に専念していた。一時期は寝たきりの生活を余儀なくされた彼女は、もうアルバムをリリースしたりツアーに出るのは体力的に不可能なのではないかと長い間感じていたそうだ。

 「自分がこれから何をしていくのか、もう仕事ができるのかもわからないままぼんやり考えていたら、曲が次々と出てきた」と彼女は当時を振り返り、「あれだけの体験をしたあとに、再び音楽を愛せるようになったんだ」と語っている。

 闘病後に書かれ、2019年2月に発表されたアルバム『ヘッド・アバーヴ・ウォーター』は、これまでの彼女の作品の中で最もパーソナルな内容となっており、9月から10月にかけて15公演が開催される同作のツアーも、ファンとの距離が近い、感謝の気持ちに満ちた内容となっている。

 久しぶりのツアーに向けた準備期間中、自分の曲を覚え直す必要もあったそうだが、彼女は、「面白いんだよ。覚え直しているのは確かなんだけれど、体が覚えてたりするんだ。“ちょっと待って、こうだったよね?”って。何も努力せずに“ここだよね”ってやれちゃう」と明かしている。それでもツアー中は“念のため”テレプロンプターを使っているそうだ。

 米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で13位を獲得した『ヘッド・アバーヴ・ウォーター』を提げたツアーのセットリストは主にこのアルバムの楽曲が中心で、ヴィジュアルは、タイトル・ソングとシングル「アイ・フェル・イン・ラヴ・ウィズ・ザ・デヴィル」のテーマである“水と火”という対照的なイメージから着想を得ている。後者はアンコールで披露されているが、彼女が“とても特別な瞬間”と表現するこの曲のパフォーマンスは、真っ赤なドレスや燃え上がる炎といったインパクトのある演出が特徴だ。

 と同時に、今回のツアーは自分自身と観客双方にとってノスタルジックなものでもあると彼女は話している。過去のミュージック・ビデオからインスパイアされた衣装替えや、たとえばデビュー・アルバム『レット・ゴー』の収録曲「スケ8ター・ボーイ」の星印や、『ベスト・ダム・シング』に収録されている大ヒット曲「ガールフレンド」のドクロマークなど、懐かしいデザインも随所に見られる。

 彼女は、「過去17年間のシングル全てに思い出がある。“スケ8ター・ボーイ”という瞬間、“ガールフレンド”という瞬間。ファンと一緒に戻ってそれを楽しめるんだ」と語っている。

 34歳になったアヴリルだが、彼女から影響を受けたと今の若手スターたちからネーム・ドロップされるようになった。ビリー・アイリッシュが熱狂的な大ファンを公言しているほか、サッカー・マミーやスネイル・メイルなどのインディーズ界の成長株もアヴリルにインスパイアされたと認めている。

 アヴリルは最近、米ロサンゼルスのグリーク・シアターで開催されたビリーと兄のフィニアスのコンサートで彼らと会ったそうだ。ライブを観るために会場に着くと、近日開催予定の自身のコンサートを告知するポスターや映像が掲げられていたことも印象的だったと彼女は振り返っている。

 尊敬する人としてビリーに名前を挙げられていることについて彼女は、「どんなときもそうだけど―ビリーのように才能があって、かっこよくて、クリエイティブな人からならなおさら―私がその人の音楽人生にインパクトを残したって言ってもらえるのは名誉なことだよ」と述べ、「私のアプローチは常に、“自分らしくいよう、書きたい曲を書こう、着たいものを着よう”って感じだった。私が業界に入った頃は、みんなお腹を出して、周りにダンサーを従えて、バブルガム・ポップだったから、自分はあまりにも違っていた。ディッキーズを着てコンバースを履いて、ヤローみたいにうるさいギターを曲で鳴らしていた」と振り返っている。

 “自分をしっかり持っている”ビリーは、当時の自分との共通点がたくさんあるとアヴリルは語っており、だからこそ今ヒットしているのではと分析している。「今の時代、人々はリアルを求め、本物を求めているからこそ、でたらめを見抜ける。それは私も一歩も引かなかったことなんだよね。自分に正直でいようと常に戦っていた。(ビリーは)とても自分らしいアーティストで、非常に才能もある。だからそれが彼女にとって有効なんだよ」と彼女は話している。

 アヴリル自身にとっても“本物であること”と“才能”の組み合わせは、今もなお成功の秘訣であり続けている。そんな彼女は、今回のツアーではキャパシティーが3,000人から5,000人の会場ばかりを選択した。『ヘッド・アバーヴ・ウォーター』のようなシリアスなプロジェクトには、親密な雰囲気の方がふさわしいと考えたからだ。「弱みを見せていて、生々しくて、さらけ出している。昔はうるさいギターとか、拳を突き上げる感じだったけどね。今でも私からそれを感じることはできるけれど、あれだけの体験をしたあとだと、“うん、自分はここにいる。生きてる”って感じなんだ。ゆっくりと戻りつつあるよ。とにかく、実際にまだ仕事をすることができて、生きていられることを神様に感謝している」と彼女は語っている。